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テコンドー協会はどこに進むのでしょうか。

 10月25日、かねてから日本代表クラスの選手と協会幹部との間の軋轢が取りざたされていた全日本テコンドー協会が28日に開催予定の臨時理事会で、第三者委員会を設けた上で、現理事の総退陣が提案されると報道されました。しかし、一方で渦中の中心人物である金原昇会長は、その職に留まる意向だとも伝えられています。

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  この問題が注目されたのは、日本代表クラスの選手たちが、現状の強化体制、スタッフに不満を持ち、強化スタッフの一新を要求して、9月に実施予定だった日本代表合宿を、高校生2名を除いたほぼ全員がボイコットしたことに始まります。

  理事の総辞職は、10月8日に開催された理事会でも、2000年シドニーオリンピックの銅メダリストで副会長である岡本依子氏とアスリート委員長の高橋美穂氏から提案されましたが、この時は十分な議論も採決されることもなく、事実上無視されています。この時の高橋氏が退席直後に倒れ救急車で運ばれるというおまけがついた出来事です。

 その後、強化委員長など強化スタッフ3人の交代が決められましたが、それでも選手たちを納得させることはできていません。

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  強化スタッフの多くがテコンドー未経験者であるなど、競技団体として常識では考えられないようなことも伝えらえていて、そうしたことが事実ならその原因はしっかりと追求されるべきでしょう。

 選手たちの指摘の中には、協会スタッフのミスにより選手が大会にエントリーできなかったことや、遠征中も同行スタッフから試合のスケジュールが伝えられないことなどがありますが、これがあくまでもスタッフの質によるもので、今回の問題の本質ではありません。

 また、選手が自腹で合宿や遠征に参加しているにも関わらず、スタッフは協会が費用を負担していることも不満の大きな要因としてあげられています。しかし、これは選手はただで競技できるべきだという、誤った固定観念に基づいていると思います。そもそもスポーツはそれにプレーする人(選手)一人ひとりの受益者負担で成り立っていて、フリーで享受される環境を提供されるアスリートは極々限られるべきです。日本代表クラスとは言っても、テコンドーがアマチュア競技であれば、選手の自己負担も致し方がないとも言えます。逆にその選手たちを支えるスタッフに給料が払われ、遠征に関わる費用を協会が支出することは当然のことだと思います。もちろん、程度の問題はあります。

 

 さて、今回のような競技団体の組織代表の横暴とも言える行為は、昨年の日本ボクシング協会や、2013年の日本柔道連盟など、日本のスポーツシーンでは何度も繰り返されてきました。まるでデジャブを見ているようです。

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 しかし、今回の金原会長らには、故意に組織の私物化や資金流用や、柔道連盟の時のような補助金の不正利用などは明らかにされていません。あくまでも強化幹部と選手との齟齬だと言っていいと思います。

 おそらく今回の出来事のベースには、金原会長をはじめとする協会幹部の「俺たちがここまでにしたんだ」という思いがあるのだろうと考えられます。

 国のレベルの競技団体と言っても、潤沢な予算で運営できているところは決して多くありません。市井の少年野球や少年サッカーのチームが、お父さんや近所のおじさん達の手弁当や持ち出しで成り立っているのとそれほど大差はないのです。

 

 古い話で恐縮ですが、今から15年ほど前、ある競技団体の専務理事にお話を伺う機会がありました。その年のオリンピックにも出場したれっきとした競技団体ですが、予算は厳しく、前年に本職を定年退職したその専務理事の方が、大会や遠征の手配から日々のホームページの更新まで、一人無給で行なっているという話でした。

 幸いそのお話をきっかけに翌年にはナショナルブランドからスポンサードを受けることになったのですが、それでも選手の強化を考えると潤沢な資金とは言える状況ではありませんでした。その頃に比べれば、マイナー競技の競技団体も国やJSCからの補助金もあり、恵まれた状況だろうと思われます。特に東京オリンピックの開催が決まってからは、スポンサーにも恵まれた団体が多いと聞いてます。

 そうした今だからこそ、一つ一つの競技団体がその運営体制を見直して、アスリートファースの組織に生まれ変わる機会にしてほしいものです。

 

 今回のような出来事を回避するために、競技団体のガバナンスに対して、来年度から国がチェックを入れることが決まっています。主に組織代表、理事が長期にその職に留まることを抑制することが目的となっていますが、組織運営の透明性を確保し、関わる人すべてが納得できる運営を行うには致し方がないことだと思われます。

 

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