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今やってる野球って何? プレミア12ってどんな大会ですか?

プレミア12ってどんな大会?

「今やっている野球って何?」

 11月12日夜にTBSで中継されていた野球のプレミア12の日本対アメリカ戦を筆者と見ていた家人が私にそう聞きました。彼女はスポーツの中継を見ながらよくそういう聞き方をします。私は、例えばサッカーのワールドカップやその予選であれば「真剣勝負」、キリンカップのような試合であれば「練習」と答えるの習慣になっています。

 しかし、この時は困りました。プレミア12は世界の野球の統一競技団体、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が主催している世界トップ12カ国の代表を集めた公式戦なはずですが、試合を見る限りそうは思えないからです。

 たまたま、時間が空いて、ほとんど事前情報なく見た中継でしたが、日本はそれなりのトップクラスの選手が名前を連ねているようですが、対するアメリカはそうは見えません。世界トップクラスである現役メジャーリーガーはどう見てもいません。過去のメジャー経験のある選手もいるようですが、ほとんどは2部リーグにあたる3Aかその下の2Aの選手で、中には独立リーグの選手もいるようです。

なぜメジャーリーガーが出場していないのか

 家人は、続いてこの選手たちはどういう選手なの?と聞いてきました。彼女は知らないような振りをしながら、そういうことにとても敏感です。

 リーグの組織構成が日米で違うので簡単には比較ができませんが、日本で言えば、2軍の選手とBCリーグなどの独立リーグの選手で構成されていて、プロ野球12球団の1軍の選手は出ていないことになるでしょうか。そう言えば、日本もメジャーリーガーは出ていません。調べてみると日本とアメリカだけでなく、数多くのメジャーリーガーを排出しているプエルトリコ、ドミニカにもメジャーリーガーはいないようです。

 結局、MLB(メジャーリーグ・ベースボール)はそれぞれのチームが登録している40名の選手にこの大会への参加を禁止していることは分かりました。1シーズン厳しいリーグ戦とそれを勝ち抜いてプレーオフで戦った選手たちにとって、11月は体を休めるための大切な期間だからです。ですから、アメリカ、プエルトリコ、ドミニカはメジャーリーグに登場前の将来有望の若手か、ピークを過ぎたベテランで構成されていたのです。ベストメンバーを揃えて真剣勝負に挑んできたのは、日本と台湾、韓国、そして心境著しいオーストラリアくらいなのかもしれません。いずれも国内リーグの選手で構成されているようです。

 来年の東京オリンピックでは、野球競技は復活しましたが、この期間MLBは例年と変わらずレギュラーシーズンを行います。ですから、メジャーリーガーがオリンピックに出場することは原則的にありません。出場できるとすれば、下のリーグの3Aとの間で行き来しているクラスの選手か、自ら契約の際にオリンピック期間中にリーグ戦を離脱すること盛り込んだ選手だけです。それでもMLBがリーグとして出場を禁止する場合もあるかもしれません。

 オリンピックにメジャーリーガーが出場しない以上、前哨戦と位置づけられたこのプレミア12に無理してメジャーリーガーを出場させる必要はないでしょう。

 そんな大会の位置付けにファンも敏感なのかもしれません。アメリカ戦が行われた東京ドームは3分の1くらいの入りでした。他の競技と比較してとても代表戦の賑わいと言えませんでした。ただ、視聴率の方では頑張っていて、台湾で行われた1次リーグから日本戦はすべて中継されていますが、いずれも10%前後と健闘は見せています。

ワールドシリーズワールドベースボールクラシック

 野球という競技にとって、MLBというアメリカの国内リーグが最高レベルの舞台であることは誰もが認めることです。そのリーグ優勝の決める試合を彼らは「ワールドシリーズ」と呼びます。MLB優勝=世界一とステイタスはアメリカ人にとって絶対のものなのでしょう。選手たちも国の代表よりも多額のサラリーと名誉を得ることができるチームでのプレーを優先します。だから、このプレミア12で優勝しても、オリンピックで優勝しても世界一と呼ぶの相応しい選手は出場していないのです。

 もう一つ分かりづらくしているのは、ワールドベースボールクラシックというMLB主催の国際大会もあることです。1998年に始まったこの大会で日本は2度連続で優勝していますが、当時はMLBの主力級はほとんど出場してきませんでした。第3回からはそれまでの招待制から予選開催に変更になり、国際大会として競技大会としての質もたかまりました。それでも、やはり世界一はワールドシリーズの勝者というアメリカ第一主義の定義はここでも変わらないのでしょう。

 本来、オリンピックで競技を行うためにIOCに登録している競技団体は、IFと呼ばれる競技ごとに一つの世界連盟を頂点に、大陸別の競技連盟、国ごとの競技連盟のヒエラルキーを作ることが義務付けられているので、二つの団体がそれぞれの世界大会を開催することは認められないはずです。にも関わらず、野球はそれが行われています。

 本来、野球という競技の世界的な発展のためにこのダブルスタンダードを是正すべきですが、IOCも含めて誰もしようとしません。IOCは巨額の資金を提供するアメリカの放送局やスポンサー企業のご機嫌を損ないたくないのでしょう。

世界一の競技人口の日本にできること

 世界で最も野球の人気があり、競技人口が最も多いのは日本だと言われています。MLBの観客動員が減少する一方で、日本のNPBの観客は増加しています。プレミア12やワールドベースボールクラシックも経済的に日本の放送権料やスポンサーが支えていると言っても過言ではないでしょう。であれば、日本の野球組織やファンは今のアメリカンスタンダードの国際的な野球の組織に対して、もっと物を言った方がよいではないでしょうか。

 ヨーロッパやアフリカでは日本の援助や指導のおかげで野球が普及している国がいくつもあります。長く日本のスポーツ文化を支えてきた野球を世界に誇るべきスポーツにするために、日の丸を付けて戦う選手たちが心から世界一を目指せるために、日本の関係者がやるべきことは数多くあるように思います。

 ところで、最初の家人の質問の答えですが・・・