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2019年のスポーツ界を振り返る その2 スポーツ編

 2019年のスポーツの大きな出来事を筆者なりに振り返ってみました。

目次

吉田沙保里引退宣言(1月8日)

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 例年のように元日から始まった日本の正月のスポーツシーンの最中の突然の発表でした。とは言え、4連覇を逸した2016年リオデジャネイロオリンピック以降、進退をはっきりさせないまま試合への出場は控え、タレント活動などをしていたことで、多くの人にとってある程度は予想はできたことだったと思います。

 吉田沙保里選手と共に世界の女子レスリング界をリードし、女子選手としては史上初のオリンピック4連覇を果たした伊調馨選手も、国内予選で東京オリンピックの出場権を得ることが難しくなっていて、世界の女子レスリングにとって世代交代の年となったようです。

大坂なおみ、全豪優勝 グランドスラム連覇(1月26日) ランキング1位(1月28日)

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 昨年8月の全米オープンの決勝でヴィーナス・ウイリアムズ選手を破ってグランドスラム初制覇をしてからわずか5ヶ月での全豪オープン優勝でグランドスラム連覇。そして、この優勝で世界ランキング1位と日本人としては初物づくしが続き、その活躍には目を見張るものがありました。

 また、試合後などのインタビューなどに見せる彼女独特の優しさとウイットに富んだ受け答えなどが、世界中のテニスファンを魅了してやまない一方で、突然コーチを解任したり、試合中でも突然崩れるなど、試合に臨むメンタリティー的にはまだ成長過程であることがうかがわされます。

 多くの日本人が心配していた国籍の問題は、22歳を迎えた10月16日に日本国籍を選択したことが発表されました。

 2020年は、東京オリンピックでのメダル獲得など2019年以上の活躍が期待されています。

池江璃花子白血病を公表(2月12日)

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 まさに突然の発表でした。5つの日本記録を持つ、日本競泳界のエースが突然の病が襲われました。時折、更新されるツイッターなどで、健気に病と戦う様子を伝えてれました。

 9月には日本学生選手権の会場に、4月に入学した日本大学水泳部のメンバーの一員として応援に訪れて、元気な姿を見せてくれました。さらに12月に入ってから無事退院して、2024年パリオリンピックを目指すことが発表されています。

小林陵侑、ジャンプワールドカップ個人総合優勝(3月10日)

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 1972年札幌オリンピックで、当時の70m級ジャンプで表彰台を独占した日の丸飛行隊の活躍以降、数々のジャンパーが世界の舞台で活躍してきましたが、2018〜2019年シーズンの小林陵侑の活躍は別格でした。ワールドカップで23戦中13勝、21回表彰台に登って年間総合優勝。男子ワールドカップ40年の歴史で日本人としての初の快挙でした。

 前年シーズンまで未勝利、平昌オリンピックでもラージヒル5位、ノーマルヒル7位の彼がいきなりの開花で、多くの人に衝撃を与えたようです。

 2019〜2000年のシーズンは、現在のところ2勝で昨シーズンほどのインパクトを与えることはできていません。年明け以降の活躍に期待しましょう。

イチロー引退(3月22日)

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 野球だけでなく日本のスポーツ界にとっての巨人がグランドを去りました。

 2018年シーズンは公式戦に出場せずにチームを帯同する特別待遇で、今年の開幕戦が日本で開催されることで、彼の現役引退が早くから既定路線であったことは想像されましたが、実際に本人自らの口から発表されるまた違った感慨がありました。

 1992年に当時のオリックス・ブルーウェイブに入団し、7年連続首位打者などの数多くの記録を日本野球に残し2001年にMLBシアトル・マリナーズに移籍しました。その年に首位打者やシーズンMVPを獲得する活躍を見せて以降、MLBの歴史を書き換えるほどの活躍してスーパースターの仲間入りを果たしました。日本人だけでなく多くのアメリカ人の野球にとっても憧れの対象となっています。

 日本人にとっては、2度の世界一に輝いたワールドベースボールクラッシックのシーンも記憶に焼き付いているかもしれません。

 彼が目指していた50歳まで現役は果たせませんでしたが、彼が日米両国に残した足跡はとても大きなものだったでしょう。

 今後の活動の方向性は明らかになっておらず、草野球に登場したり、学生を指導するための資格を取得したりする彼の挙手一動卒に注目が集まっています。

タイガー・ウッズがマスターズで11年ぶりのメジャー制覇(4月13日)

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 圧倒的な強さを見せていたあのタイガーが帰ってきました。昨年のツアー選手権に続き、メジャーの中でも最もタフなコースと言われるオーガスタでの復活優勝です。頭髪は少し寂しくなりましたが、勝負服と言われる最終日の赤いシャツは今も健在です。

 10月には今年から始まった日米ツアー共催のZOZOTAWNチャンピオンシップに出場するために来日。豪雨のために月曜日までずれこんだこの大会で優勝し、アメリカツアアー歴代タイとなる82勝目をあげて、日本のファンにもその勇姿を見せてくれました。

 45歳となる来年は、多くの日本人が期待する東京オリンピック出場はランキング的に難しそうですが、それでも彼の活躍はまだまだ見ることができそうです。

八村塁、NBAドラフト1巡(6月21日) & 開幕から活躍

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 よもや日本人がNBAのドラフトで1巡目に指名される、そんな時代が来るとは日本人どころか世界中の誰もが想像していなかったでしょう。と書き始めようとしましたが、例外が二人だけいたようです。一人は、富山市立奥田中学校時代のバスケットボール部コーチの坂本譲治氏です。坂本氏は中学生の八村に「お前はNBAを目指せ」と指導をしていたそうです。そしてもう一人が、言うまでも坂本コーチの言葉を信じてトレーニングを続けた八村塁本人です。

 高校まで日本で過ごした八村が渡米して強豪ゴンザス大学での活躍が高く評価され、田臥勇太、渡邉裕太に続き日本人3人目のNBAプレーヤーとなりました。所属チームのワシントン・ウイザーズの主力選手として、開幕戦から大活躍をしています。そのお陰で、あまり見ることがなかったNBAの映像がスポーツニュースで流されることが多くなり、その影響は計り知れません。

 さらに2月に行われた東京オリンピック予選の2次ラウンドでは、共にNBAで活躍する渡邉裕太とともに、東京オリンピック出場を決める立役者となる活躍を果たしました。

 まずは、来年の東京オリンピックでの活躍。そしてNBAでのスーパースターの仲間入りを期待したいところです。

ホンダF1 13年ぶりの勝利(6月30日)

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 世界のモータレースの最高峰、F1での朗報でした。ホンダエンジンを積むルノー・ホンダのマックス・フェルスタッペンが、オーストリアグランプリで優勝。ホンダF1としては2006年のハンガリーグランプリ以来の13年ぶりの優勝となりました。

 1988年には年間16戦15勝をあげるなど1980年代後半には圧倒的な速さで一時代を築いたホンダF1でしたが、その後は参戦と撤退を繰り返しつつも低迷が続き、今回の2015年からの参戦も結果を出せずに苦しんでいました。そのホンダが今年新しいパートナーであるレッドブルを得て復活。オーストリアグランプリの後も、7月のドイツグランプリと11月のブラジルグランプリでも優勝。年間3勝は1992年に5勝して以来のこと。さらにブラジルグランプリでは、同じくホンダエンジンを積むトロロッソが2位となって、1991年日本グランプリ以来28年ぶりの快挙となりました。

 環境問題のために逆風が吹くモーターレースですが、世界三大レースの一つと言われるルマン24時間レースではトヨタが2年連続で1、2フィニッシュを達成。日本の製造業の地盤沈下が危惧されているだけに、F1のホンダと共に今後も活躍を期待したいものです。

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 また、ルマン24時間レースを含む世界耐久レースでトヨタをドライブする中嶋一貴が、日本人初の年間王者になっています。

渋野日向子、全英女子オープン優勝 42年ぶりのメジャー制覇(8月4日)

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 海外メディアからスマイルシンデレラと称された彼女は、事実上のルーキーシーズンの今年、シンデレラストーリーを体現しました。ラウンド中、常に笑顔を絶やさず、解説者たちも舌を巻くほどの強気のゴルフを続けて、1977年に樋口久子全米女子オープンを制して以来の快挙を達成したのです。

 国内では、5月にメジャータイトルのワールドレディースでの自身初優勝を含めて4勝をあげて、賞金女王にあと一歩に迫りました。世界ランキングでも畑岡奈紗に次ぐ、日本人では2番目につけていて、来年の東京オリンピック出場にも手がかかっています。

 国内賞金ランキングの対象とならない全英女子オープンの賞金を合わせると年間2億2500万円を稼いだ渋野にとって来年こそが勝負の年となりそうです。

ラソングランドチャンピンシップ開催(9月15日)

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 猛暑の中で開催される東京オリンピックでの好成績の狙うことと、これまで批判の多かったマラソン代表選考に一石を投じたマラソングランドチャンピオンシップ。強化責任者の瀬古利彦氏自慢の男女同日、同一コースで男女それぞれの3人の代表内2人を、東京オリンピック本番と同じコースで決めるこのレースは当然のように盛り上がり、多くの注目中、男子は中村匠吾(1位:2時間11分28秒)、服部勇馬(2位:2時間11分36秒)、女子は前田穂南(1位:2時間25分15秒)と鈴木亜由子(2位:2時間29分02秒)がオリンピック出場を決めました。
 あとは、残りを男女一人ずつを指定の3レースの結果から決めればよいと思われていたこのレースの約1ヶ月後に事態は急変します。みなさんがご存知の通り、コースが札幌に変更されたのです。

 マラソングランドチャンピオンシップが行われた9月15日は、今年はたまたま高温でしたが、平均気温で見ると8月の東京よりもむしろ札幌の気温に近く、せっかく本番の環境で選考レースをやったのに、という批判は半分しか当てはまらないことになります。

 東京で開催されるより間違いなく、選手ファーストのコンディションで行われることにことになったマラソンは高速レースも予想され、日本選手の苦戦が予想されますが、それでも地元開催となる頂点のレースでの奮起を期待したいものです。

ワールドカップラグビー成功と日本代表ベスト8(9月20日〜11月2日)

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  日本代表の結果、日本国内での大会の盛り上がり。これだけの成功を事前に誰が想像したでしょう。

 スコットランドアイルランドと言ったティア1と呼ばれる世界的な強豪2カ国を含めて4勝0敗で1ラウンドを突破して世界を驚かせました。しかし決勝トーナメント1回戦ではこの大会を優勝した南アフリカと対戦してノートラライで敗れました。それでも、世界の強豪を含む4試合で相手を圧倒し、正真正銘、世界のトップレベルの仲間入りを果たしたのです。

 また、大会を通じて、日本戦以外の対戦も含めてほとんどの会場が満席となり、テレビでも日本戦で平均視聴率で40%以上、最高視聴率で50%以上を記録、日本戦以外の試合でも、準決勝のウェールズ南アフリカ戦で19.5%、イングランドニュージーランド戦16.3%、さらに決勝戦イングランド南アフリカ戦で20.5%の高視聴率を記録をして、大会を通じた注目の高さが証明された形となりました。

 来年の東京オリンピックパラリンピックに向けて、日本人の心に数多くの変化をもたらしたことが期待されています。

※視聴率データはいずれもビデオリサーチの調べによる関東エリア

世界陸上選手権で 50キロ競歩(9月28日鈴木雄介)、男子20キロ競歩(10月4日山西利和)が優勝

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 男子の競歩競技がいきなり、東京オリンピックで金メダルの大本命とされる競技となりました。カタールで開催されて世界選手権で、高温多湿の過酷なコンディションで行われたレースの勝者は、男子は50キロ、20キロともに日本人でした。

 猛暑対策のため深夜にスタートしたにも関わらず、50キロでは46人中完走できたのが28人という結果は、マラソン同様にその過酷さを示しています。カタールでのマラソン競歩のレースの様子から、IOC東京オリンピックのマラソン競歩の会場を札幌へ移転することを決意したようです。

 マラソンと同じように、東京で開催された方が日本人に有利と言う声も多いですが、近年の日本の競歩は国際的にレベルが高く、カタールの50キロで優勝した鈴木雄介は、20キロ競歩の世界記録保持者でもあります。ぜひ、札幌大通り公園でトップでテープを切ってもらいたいものです。

 尚、テレビ放送にこだわるIOCは、競技時間が3時間半を超える50キロレースを東京オリンピックを最後にオリンピック種目から除外します。

ブリジッド・コスゲイ 16年ぶりに世界新記録(女子マラソン) 10月13日

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 毎年のように世界記録が更新される世界の陸上界で、長く更新されてこなかった記録の一つがこの女子マラソンでした。

 1998年にテグラ・ロルーペ(ケニア)が1985年の記録を破って以降、この種目の記録はしばらくは毎年のように更新されていました。日本人では唯一、2000年シドニーオリンピック金メダリストの高橋尚子が翌年のベルリンマラソンで出した2時間19分46秒が新記録として残っていますが、同じレースでケニアのキャサリン・ヌルレバが2時間18分47秒が出し、この記録がこの時点での世界記録になりました。そのヌルレバの記録を破ったのがイギリスのポーラ・ラドクリフで、彼女が2003年にロンドンマラソンで出した2時間15分25秒が、これまで世界記録として残されてきました。

 コスゲイがこれまでのラドクリフの記録を1分以上縮める2時間14分4秒の記録を作った一方で、日本では2時間10分台で走る選手が2005年の野口みずき以降現われておらず、この世界記録更新で、世界との差がさらに広がったことになります。

 ちなみに、このコスゲイも話題となっているナイキの厚底シューズのユーザーです。

東京オリンピック、マラソン競歩を札幌に会場変更(10月〜)

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 突然のIOC国際陸連の意趣返しに、組織委員会、東京都、日本陸連、そして何より世界の選手や指導者たちが翻弄されています。具体的なコースの選定についても現状世界陸連と組織委員会の間での意見の合意があったという段階で、本当の意味での最終的なコースの決定は、雪が溶けて実際にコースの確認ができる来春までずれ込む見込みです。

 レース当日の気候だけを見れば結果的にはアスリートファーストと言えるのでしょうが、もともとはアスリートファーストでされた判断ではないことは間違い無いでしょう。

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井上尚弥 World Boxing Super Seriesで優勝(11月7日)

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 2012年プロデビュー当時からモンスターと呼ばれていた井上尚弥が、今年、無敗のまま世界の頂点に立ちました。
 軽量級では異質とも言えるほどのパンチ力に試合相手を探すのに苦労したという井上は、デビューから2年後の2014年4月に、プロ入りわずか6戦目で初挑戦した世界ライトフライ級タイトルマッチに勝利して世界チャンピオンになりました。その年の年末には一気に2階級アップして世界スーパーフライ級チャンピオンになると、その後この王座を7度防衛した後、2018年5月に階級をさらにあげて、世界バンタム級王座に奪取に成功します。
 2018年秋からは、世界のボクシング団体の王者がトーナメントで戦い、各階級ごとの真の世界一決定を目指すWorld Boxing Super Series(WBSS)にバンタム級での出場して、10月の1回戦では僅か1回、2019年5月に行われた2回戦でも2回で、ノックダウン勝ちを収め、11月の決勝戦進出を決めした。この決勝戦でフィリピン出身で、バンタム級より重いフェザー級スーパーバンタム級に王座の経験を持つノニト・ドネアと対戦し、判定で3−0で勝利して、井上はバンタム級の世界王者となったと言えます。
 日本のボクシング至上最高の選手と称される井上は、まだ26歳。ここまで16戦全勝と負け知らずの強さを見せてくれています。
 ロンドンオリンピックで金メダルを獲得して今年7月にミドル級の世界王者となった村田諒太ライトフライ級王座の防衛を現在7度成功している寺地拳四朗など、現在日本出身の世界チャンピオンは7人。
 日本だけでなく世界でも人気スポーツのプロボクシングで、井上をはじめ日本人選手のさらなる活躍を見てみたいものです。

新国立競技場完成(11月20日

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 あまりの巨額の建設費に多くの批判が集まり、安倍晋三首相の声によってコンペで決定した設計の撤回、やり直しを行ったため、工期が大幅に遅れた新国立競技場がようやく完成しました。

 一度建設費に注目された国民の目はきびしく、当初計画より小規模になり収容観客数が減ったほか、近年このレベルのスタジアムではスタンダードとなっている空調がカットされたほか、オリンピック後に計画されていた開閉式の屋根の増築や球技専用のスタジアムへの改修も費用が理由で全て行わなくなりました。

 一方、後期の遅れのため、当初予定されていたラグビーワールドカップで使用ができなかったほか、通常本番1年前に行われるプレ大会も行われずに終わりました。

 これで、オリンピック、パラリンピックのために新設が進められていた全ての施設が完成したことになります。

東京オリンピックパラリンピックのために新設された施設
青=オリンピック競技 緑=パラリンピック競技 赤=オリンピック、パラリンピッ共通

 新国立競技場は、正式名称が「国立競技場」に決まり、1月1日には、旧国立競技場で恒例となっていたサッカーの天皇杯決勝が開催されます。

 なお、12月20日は、組織委員会の予算のバージョン4が発表され、バージョン3と比べてスポンサー収入が300億円増額した一方で、予算総額1兆3500億円に変更はありませんでした。また、マラソン競歩の札幌移転に関する費用が計上されておらず、組織委員会としては、IOCに支払いを求めていくと言います。

 

 連載的に不祥事編もアップしていますのでよろしければお読みください。

 2019年のスポーツ界を振り返る その1