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新型肺炎への対応がスポーツの社会的な価値を世に問う

新型コロナウイルスが猛威をふるう中国と日本への影響

 新型コロナウイルスの感染拡大のため、スポーツ界に色々な影響が現れています。
 2000人を超える死者が出ている中国では、オリンピック予選やF1などが中止または中国国外での開催地変更が余儀なくされています。不特定多数の人々が同じ場所に集まり、接触の機会を持つことがウイルスの感染拡大に繋がることから、当然の処置だろうと思われます。もちろん、スポーツだけに留まりません。中国の最高決定機関である全国人民代表大会全人代)が延期されたほか、その他のイベントの多くが中止や延期を余儀なくされているようです。
 オリンピック予選のような国際試合は海外の選手やチームが中国に来ないということもあるでしょう。 

 そうした影響が日本でも現れています。約38000人が出走予定だった3月1日の東京マラソンが、一般ランナーの参加を取りやめて、およそ200人のエリートだけのレースになったことは皆さんもご存知かと思います。さらに東京の後を追うように名古屋ウイミンズマラソンでも一般ランナーの参加を取りやめることが発表されました。

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 今週末からリーグ戦が始まるJリーグでは一部の試合で日程の変更や無観客での開催が検討されたり、オープン戦がまもなく始まるプロ野球でも、ファンとの接触の機会を減らすなど、徐々に対策が打たれているようです。

 東京オリンピックを前に、各国からの日本国内での事前合宿も中止を余儀なくされているようです。感染リスクの高い日本国内に足を踏み入れることに二の足を踏むのは当然のことでしょう。
 一方で、東京マラソンの対応に、過剰反応であるかのような指摘する記事が散見されています。また、厚生労働省20日にイベントについて「開催の必要性を改めて検討するようお願いする」との声明を加藤厚生労働大臣が発表し、イベント主催者に開催可否の判断を委ね、政府としての具体的な判断は行いませんでした。

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 そこで、スポーツイベントの下記の3つの分けて、その対応について考えてみたいと思います。

1.観戦型のプロリーグなどのイベント

 現在までのところ、このタイプのイベントの反応が極めて鈍い印象です。21日からリーグ戦が始まるJリーグは、公式サイトなどで感染予防策を呼びかけた上で、感染リスクが高くなる室内開催の札幌ドームでの試合の日程の調整を始めているようです。

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 しかし、すべての試合を室内で開催するBリーグや22日から男子のファイナルステージを迎えるVリーグからは対応が全く聞こえてきません。実際の開催の可否はともかく、少なくとも来場者に向けて感染予防を呼びかける義務はイベントの主催者としてあるはずです。こうした時に、組織の社会性と危機意識を見ることができます。
 室内、室外に関わらず、スポーツ観戦では、通常の社会生活にはない、大きな声で歌ったり、叫んだりするシーンが多くあります。その時に、ほとんどの人は自覚がないままにツバを飛ばしていることでしょう。多くの人が密集するというだけでなく、これも感染拡大のリスク要因になるのではないでしょうか。
 また、2の参加型の大型イベントにも共通することですが、こうしたイベントの主催者が大量に除菌アルコールなどの感染対策の資材を購入することで、医療施設など本当に欠かせない施設などで不足する事態が発生する可能性があります。こうした点も踏まえて、そのイベントの社会的な「必要性」を検討する必要があると思われます。

2.参加型の大型イベント

 日本の大型の参加型のスポーツイベントと言えば、マラソンにつきると言っていいと思います。 東京マラソンの一般ランナーの参加中止によって、多くのマラソンイベントが開催の危機を迎えているかもしれません。

 しかし、東京マラソンは極めて特殊です。海外から参加者も含めて4万人近い人が参加し、新宿駅からスタート地点の都庁前まで、まるで密集した羊や牛の群のようになって移動します。しかもその多くは地下道です。全員が利用するわけではありませんが、手荷物預かりの受け渡しも非常に混雑をしますし、仮設が中心となっているトイレは防菌対策をしようもありません。また、スタートまですし詰め状態で1時間近く待たされることも感染リスクを高めることになるでしょう。前日のエントリーも時間によってはかなりの混雑です。そうしたことを考えていけば、東京マラソンの一般ランナーの中止は致し方なかったと言えるでしょう。

 名古屋ウイミンズマラソンの一般参加の中止は、スタートゴールがナゴヤドームという室内であることがポイントだったようです。

 しかし、各地で行われるマラソンイベントが、本当に中止の必要があるほどの感染リスクがあるのかは別の判断基準があるように思います。主催者がしっかりと検討し、除菌アルコール、手洗いなどに加えて、参加者をできる限り密集させないなど、できる限りの対策を講じることで開催が可能かもしれません。ただし、参加者が参加してくれるかどうかは別の話です。

3.スポーツ教室などの小規模なイベント

 スポーツ教室などの小規模なイベントには、定期的に開催されているものと単発のイベント型のものがあると思いますが、競技や利用する施設によって、状況はかなり違ってくると思われます。屋外スポーツより屋内スポーツの方が危険度は高まりますし、柔道などの直接体が触れ合うような競技は当然リスクは高くなるだろうと考えられます。また、人数に対しての施設の広さ、換気の状況などによっても状況が違うかもしれません。いずれにしても、除菌アルコールの使用や手洗いの励行などの対策で、少しでもリスクを回避しながら様子を見極めていくしかないでしょう。

 1つの目安となるのが、その地域の小学校、中学校などの対応を参考にする方法があると思われます。極論として言えば、インフルエンザのように、万一、学級閉鎖のクラスが多く発生するようになったり、学校閉鎖が発生するような状況では、そのエリアで開催される教室型のイベントも、年齢を問わず中止にすべきだと考えられます。子供に蔓延の兆候があれば、大人がかかっていないわけがありません。

 そうした情報は、地元の市区町村のスポーツ担当セクションに相談をすれば、提供してくれるはずです。

スポーツの社会的な価値を問う新型コロナウイルスへの対応

 最後に明確にしておくべきことがあります。今回の新型コロナウイルスに関して、感染予防のひとつに、不要不急の外出を控え、不要に人混みに行かないということがあります。スポーツイベントの多くが、ほとんどの人にとって不要不急の外出であり、不要な人混みにあたるのはないでしょうか。

 一方で、例えばマラソン大会に出場できるような健康な大人の多くにとっては、今回の新型コロナウイルスは、あまり怖い病気ではないかもしれません。しかし、こうしたスポーツイベントに参加した人が感染した結果、その人の家族や周囲の高齢者や基礎疾患がある人に感染させないとは言えません。ですから、イベントの主催者だけでなく、参加する側もそうしたことを考えて、自ら自粛や最大限の予防処置を取るべきだと思います。

 20日厚生労働省の発表は、イベントの自粛、中止を要請せず、主催者に自主的に必要性を判断することを求めました。このこと自体は、政府や厚労省は自らは何も判断せず、判断と責任を主催者に丸投げした無責任な姿勢だと思います。が、もしかすると、今後、スポーツイベントの社会的な価値、必要性が問われる大切な機会になるかもしません。どこまで、スポーツイベントが必要とされ、優先されるのか? されるべきなのか? 

 それはオリンピックでも同じです。本来、私たちが健康に導くはずのスポーツを、新型コロナウイルスという新しい脅威を前に、どのような位置付けにすべきなのでしょうか。

 そして最終的にその判断をするのは政府でもイベントの主催者でなく、参加する一人一人、観戦する一人一人です。マラソン大会が行われてとしても、試合が開催されたとしても、そこに足を運ぶかどうかは、私たち一人一人が判断することなのです。

 

 

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