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ヒロインの交代〜女子マラソン第三の代表〜

大阪から名古屋へ、ヒロインは交代した

 3月8日、冷たい雨の降りしきる名古屋で、一山麻緒選手が日本人歴代4位の2時間20分29秒で優勝し、東京オリンピックの3番目の代表の座を決めました。

www.nikkei.com

 東京オリンピックの女子マラソンを決める最後のレースとなった名古屋ウイメンズマラソンは、低い気温と終始振り続ける雨の中で行われ、レースが低調になることが心配されましたが、徐々にタイムがあがって、中盤以降は1月の大阪国際女子マラソン松田瑞生選手が出した2時間21分47秒を超えるペースが続き、30キロ手前でスパートをかけて海外招待選手も置き去りした一山選手が、ゴールまで快走を続けてオリンピック代表の座を手にしました。

 ヒロインの交代です。昨年の9月のMGCで1位のと2位の選手が内定を得て、残りひと枠に最初に手をあげたのが、1月に大阪で優勝した松田選手でした。目標タイムの2時間22分22秒の記録を大幅に上回った松田選手は一躍ヒロインになりました。ゴール会場で彼女の母親までもがテレビに登場し、メディアはヒロインの登場に熱狂したのでした。

またもナイキ厚底シューズのアドバンテージが証明された

 名古屋は記録が出やすいという解説者もいますが、過去の記録の見る限り国内の女子のレースで最も好記録が出ているのは大阪で、その意味で松田選手は有利なはずでした。

 名古屋では、東京オリンピック代表の3つ目の枠を、一山選手以外に、同じワコールに所属する安藤友香選手、大阪で途中棄権した福士加代子選手、人気のある岩出玲奈選手などで争うことになりました。この中で、ナイキのシューズを履いて走った選手は「超厚底」のエアズーム アルファフライ ネクスト%を履いた一山選手ただ一人。3月1日の東京マラソンで好記録で東京オリンピックの切符を手にした大迫選手に続いて、このシューズを履いた彼女が好記録で優勝したことは偶然とは言えないでしょう。

 一山選手が所属しているワコールのウェアは、上着からレースウェアまでアディダス。最近では肩まで3本ラインの入ったこれまで以上のアディダスのアピールが強いウェアを着用しているだけに、一山選手のナイキのシューズの着用にはチームとして大きな決断が必要だったでしょう。一山選手は、昨年のクイーズマラソンではアディダスのシューズを履いていましたが、2月2日の丸亀香川ハーフマラソンではナイキの厚底シューズを履いていたそうです。

 一方、一山のチームメイトでアディダスのシューズを履いた安藤選手は、日本人2位ながら同じ名古屋で出した自己ベストに及ばない2時間22分41秒、同じくアディダスを履いた福士選手は大阪に続いて途中棄権。所属するアンダーアーマーのカスタマイズシューズを履いた岩出選手は2時間28分39秒と自己ベストに遠く及ばず、日本人5位に終わりました。

 逆に持ちタイムを大幅にあげて日本人3位、4位に入った一般エントリーの佐藤早也伽選手と細田あい選手はいずれもナイキの厚底シューズのユーザーです。

 大阪で優勝してヒロインになった松田選手がニューバランスのカスタマイズシューズを履いて自己ベストを約1分更新したのに対して、ナイキの超厚底シューズを履いた一山選手が、アディダスを履いて出した自己ベストを4分以上更新したことは、そのままナイキシューズのアドバンテージと言えるかもしれません。

 但し、これだけシューズの効果が明確になっても、2時間20分を切る選手は登場していません。日本人の20分を切った選手は、2時間19分12秒の日本記録を持つアテネオリンピックメダリストの野口みずきさんをトップに、渋井陽子さん、高橋尚子さんの3人で、2001年から2005年までの15年以上の前の記録です。世界記録は、昨年、ナイキの厚底シューズを履くブリジット・コスゲイ選手(ケニア)が16年ぶりの更新して、2時間14分台に突入しました。日本記録との差はおよそ5分。数字の上では世界との差は一向に縮まる様子を見せていません。

 一方で、大阪と名古屋の2つのレースに共通したことがあります。持ちタイムで2時間20分前後の記録を持つ海外招待選手を、日本人選手が終盤完全に置き去りにして一人で好記録が出していることです。ナイキシューズの効果はともかく、国内レースでも海外招待選手の後塵を拝することが多かった女子マラソンに新たな期待が生まれました。

大規模イベント自粛の要請に応え感染拡大に適切な処置はされたのか?

 名古屋ウイメンズマラソンは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため東京マラソン同様に一般参加を中止して開催されました。他にもセレモニーを取りやめ、縮小するなどの対応は行なったようですが、沿道には数多くの人が訪れ応援をしていました。

 沿線の地下鉄の駅などには感染自粛を呼びかけるポスターなどを掲示したようですが、結果的にはその効果は限定的だったようです。自らの感染しないため、万一、自分が感染者だった場合に、感染拡大をしないようにと考える人は、自粛の要請に関係なく沿道に出向くことを控えるはずですから、それでも尚、応援に向かおうとする人に自制を促すにはもっと強力かつ実効性ある方法が必要だったでしょう。

 特に感染拡大が他県と比べても顕著な名古屋での開催だっただけに、愛知県や名古屋市が積極的に関与し、主催者が応援を制限するために具体的に処置が取れないと確認できた段階で、道路使用の許可を取り消すなどしてレース自体を取りやめさせるなどの強硬な処置をすべきだったと思います。

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