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新型コロナウイルス感染拡大のスポーツにおける影響を整理する 1

1 東京オリンピックパラリンピックへの影響

突如決定された東京オリンピックパラリンピックの延期

 3月24日、それまで頑なに7月24日開幕を譲らなかったIOCと日本政府が、その日のトップ会談で方針を180度転換して1年以内の延期を決定しました。その後1週間も経たないうちに、1年後の2021年7月23日の開幕を発表して、組織委員会や東京都はその準備に入っています。

 実際の開幕に向けては、施設の確保や費用の分担など多くの課題がありますが、選手の目線に立った時には、今後の代表選考の方法やその時期が最も気になっていると思われます。IOCは早々に、既に2020年大会の出場権を得ていた選手については、2021年開催時にも引き続きその権利を維持させる方向性を各競技団体に通知していますが、最終的には競技団体やそれぞれの国のオリンピック委員会の判断になっているようです。

 一方で、IOCは選手選考の最終リミットを発表するなど、矢継ぎ早に対応をしています。

 目標する日程が決まったことで、それに向けて安心して新たなスタートした選手がいる一方で、その1年は長過ぎると引退を決断する選手も現れています。また同時に1年間延期が決まったパラリンピックには、進行性の病気の選手もいて、そうした選手の中には今年であれば出場可能だったが、来年では難しく、場合によっては命を落としている可能性もあります。

選手が置かれている状況はIOCが考えるよりもはるかに厳しい

 報道で伝えられる各国の状況を見る限り、一人一人の選手たちの状況はIOCが考えているよりも遥かに深刻なようです。元々、今夏の開催に固執していたIOCが延期に舵を切ったのも、練習環境もままならない状況を訴える選手たちのSNSなどを通した声に欧米の大手メディアが反応し、次々とIOC批判を展開したからです。感染拡大の終息が見えない欧米、さらに今後さらに厳しい状況の追い込まれるであろうアフリカや南米の選手たちが、来年夏に開催されるオリンピックやパラリンピックに向けて、安心して平常時と同じようにトレーニングができる環境を取り戻せるかどうかは、まだまだ未知数の状況です。そうした中での十分に議論がされていないかのような早急な延期の時期の決定と発表に、批判的な声も少なくありません。IOCが目指しているのは、オリンピックのマーケティング価値を下げないことであることが、こうした動きでもわかります。

日本の楽観的な状況も厳しさを増している

 海外の状況からと比べてみると、日本の状況はまだましなように見えます。実際に開幕の時期が見えないMLB田中将大選手や筒香嘉智選手は、自宅隔離のリスクを負ってまで帰国しています。

 ただし、4月7日に政府から発布された緊急事態宣言によって状況は大きく変わったようです。対象となった東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府兵庫県、福岡県では、体育館などの運動施設の閉鎖も含まれていて、この影響でオリンピックに向けて代表候補のアスリートの強化の拠点となってきた味の素ナショナルトレーニングセンター国立スポーツ科学センターが即日閉鎖されました。このナショナルトレーニングセンターを日常的に利用していた主な競技はウエイトリフティング、柔道、卓球、ハンドボール、新体操、体操、バドミントンです。

 特に近年心境著しいバドミントンと卓球はこの施設を利用して年間を通してナショナルチームとしてトレーニングしていたことが、躍進の大きな理由になっています。

 その中でも影響が最も大きいのは、併設された合宿施設に住み、ナショナルトレーニングセンターでトレーニングをしていたエリートアカデミーの選手たちです。卓球代表の張本選手はその一人です。また新体操の代表チームもチーム全員がこの施設に住んで、ナショナルトレーニングセンターで日常的にトレーニングしていました。彼らは施設側から退去を求められ、自宅に帰ることになったと報道されています。

 公共の体育施設の閉鎖によって、練習環境の失った選手も数多くいるでしょう。従来から一般利用とは別の方法で公共施設を独占的に使用して、トレーニングしているトップレベルの選手やチームは少なくないのです。しかし、これまでは特別扱いが許されても、政府や都道府県から施設の閉鎖を要請されるような状況では、その特例的な使用も難しくなっているはずです。

 さらに大学の施設を利用してトレーニングの拠点としてる選手も数多くいます。現役の大学生だけでなく、母校を拠点にしている場合も少なからずあります。

 当初、大学の授業そのものはほとんどの大学が冬休みに入っていた時期だったことから影響は少なかったようですが、多くの大学で校舎や施設に立ち入りが制限され、一部ではトレーニングに影響が出ていたようでした。さらに今回の緊急事態宣言で自粛要請の対象となったことで、その使用が法的にも制限されることになったのです。

 各大学がオリンピックを目指す選手をどれだけ特別扱いするか次第ですが、大学にとっては自らの施設が感染拡大の原因を作ることは、マーケティング的に見て、全力をあげて避けたいはずです。そのためにはできる限り校内でのいかなる活動も避けるでしょう。

 あらゆるところで、トレーニング環境が制限されているトップレベルの選手たちにとっても正念場となる1ヶ月間が始まっています。

 次回は、日本国内のスポーツチームの経営への影響を整理してみます。

 

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4月〜
1月〜3月