スポーツについて考えよう!

日々、発信されるスポーツの情報について考えよう

新型コロナウイルス感染拡大のスポーツにおける影響を整理する 5

5.スポーツクラブ閉鎖の影響

クラスター発生後も営業を続けたスポーツクラブ

 新型コロナウイルスの感染防止のために、休業が要請がされた中にスポーツクラブがあります。スポーツクラブという業態の中にはフィットネスクラブ、ジムと呼ばれている店舗も含まれ、施設の大小や設備にバリエーションなど色々なタイプがありますが、そのほとんどが会員制のようです。業界サイトのフィットネスビジネスのデータによれば2018年現在、全国には5814軒のフィットネスクラブ(=スポーツクラブ)があって約514万人の会員がいるそうです。

 ・日・米・英の民間フィットネスクラブ産業市場デ―タ – FITNESS BUSINESS

 3月上旬には千葉県市川市のスポーツクラブで集団感染が明らかになりましたが、短期間の自主的な閉店で営業を再開しています。この時、スポーツクラブという業態が、避けるべきとされているいわゆる「3密」に該当するシチュエーションが多く、感染リスクが高い場所であることが認知されたかと思いますが、業界団体は、除菌や利用者同士の距離を空ける対策を行いながら通常営業を続け、また多くの利用者も利用を続けていたというのが現状です。2月下旬から3月上旬には自治体の多くの体育施設が閉鎖されているので、その後さらにスポーツクラブの利用者が増えている可能性もあります。

 4月8日に発令された緊急事態宣言にともなう自粛要請では、最終的には対象となったすべての7都府県で自粛要請の対象となりました。

 所狭しとずらりと並んだマシンで多くの人が汗を流していたり、決して広いとは言えないフロアで多くの人が動きを合わせてフィットネス運動を行なっているなど、更衣室なども含めて、感染リスクを低くない場所という印象ですが、最近ではそれほど広くないオフィスビルのワンフロアなどの利用した小規模のスポーツクラブの出店も多く、そうした施設はより人の密集度の高い空間となっています。また、近年20代、30年代の利用者が減少傾向にある一方で、60代以降の高齢の利用者が増えているというデータもありますが、高齢化が進む日本の人口分布の変化以上のものなのかは、分析が出来ていません。

COVID-19の影響によるスポーツクラブ休業の多くの影響

 スポーツクラブだけでなく、公共の体育施設を含めて、施設の閉鎖によっていくつもの問題が発生しています。

 まずは、言うまでもなく運動不足です。特に都心では、スポーツクラブ以外に体を動かす場所がないという環境の方もいるでしょう。密集を避ければ外を走れば良いと言う人もいると思いますが、ランニングマシンでは長時間走れるのに、道路では走る気にならないという人は思いの外存在します。

 周囲からの目があったり多くの人と一緒に体を動かすことで継続的なモチベーションを保てる人や、インスタクターやトレーナーの指導を常に必要としている人もいます。こうした人にとっては、スポーツクラブの閉鎖がそのまま運動ロスに繋がります。

 ボディビルやダイエットなどの継続性のあるプログラムを行っていた人にとっては、施設の閉鎖はそのプログラムの中断に繋がってしまいます。プログラムを中断することで、それまでの努力が無に帰す可能性はありますが、家庭で簡単にできることもたくさんあるはずです。しかし、スポーツクラブ側が家庭でできるプログラムを提供し効果を継続させることは、そのまま施設の不要論にも繋がりますので、営業的には判断が分かれるところです。

 もう1つの影響は、体を動かすことが日常化し、半ば中毒状態になっている人たちです。ボディビルダーにこうした人が多いと聞きますが、それに限らず毎日スポーツクラブに通っていたような人は、施設の閉鎖でメンタル的に不安定に陥っている人がいます。

 首都圏では、緊急事態宣言の発令でスポーツクラブが閉鎖になった都県の周辺の県の施設に、閉鎖になった都県から多くの人が詰めかけていると報道があります。やはりジムでトレーニングをしないと落ち着かないという人が多いそうです。そうしたスポーツクラブでは、入場人数を制限したり他県からの来場を禁止することで対応しているようですが、こうした行動は感染拡大防止の考え方に反する行動なので、ぜひ控えて頂きたいです。

高齢の方への影響は単なる運動不足では終わらない

 最近増加傾向にある小規模のスポーツクラブでは、これまであまり運動する機会がなかった人や高齢利用者の割合が多い施設や、そうした人を対象に絞っている施設もあります。

 高齢の方の場合は、運動不足が、例えば歩行機能の低下などそのまま運動能力の低下を招き、さらには疾病の罹患や再発や寝たきりに繋がる可能性すらあります。

 それぞれにスポーツクラブのスタイルにもよりますが、スポーツクラブで集まることでコニュニティが生まれている場合もあるでしょう。昔に風に言えば、井戸端会議です。高齢の方にとっては、そうした時間が外と繋がる唯一の機会である可能性もあります。毎週1回、スポーツクラブに通うことが、事実上の生きがいになっている人もいるかもしれません。

 そうした人たちに、代わりとなる環境を提供することは難しいのが現実ですが、平均寿命が80歳を超える世界一の長寿国の日本では、健康寿命を維持することも差し迫った課題です。長期的に見れば福祉崩壊、財政破綻に繋がるからです。

一人一人の創意工夫で新型コロナ時代を乗り切る時

 2月下旬から始まった小中高校の休校の影響で、通信販売を中心に家の中で運動で体を動かすことのできるグッズの販売量を大幅に増加しているようです。体を動かすTVゲームも人気です。今回のスポーツクラブの閉鎖で、大人のためのグッズも好調のようです。

 YOUTUBEなどでは、トップアスリートが体を動かすためにプログラムを配信して、日々更新されています。そうした情報を参考にしながら、自前で用意したグッズを使って、体を動かすことも悪くないはずです。

 自前のプログラムを用意する時には、体重や筋肉量など目に見えて変化のわかる目標を設定することが重要です。それがモチベーション維持に繋がります。部活時代を思い出して、腹筋や腕立て伏せの回数でもOKです。スポーツクラブでは、コンピュータやトレーナーが設定してくれたものを自分で設定するわけです。家族に協力してもらってもよいでしょう。

 星野源のオリジナルソングのYOUTUBEに合わせてコラボすることがトレンドになっていますが、無料のアプリのテレビ会議のシステムを使って、スポーツジム仲間と一緒にダンスをしたり、フィットネスをすることも可能です。10人くらいまでならスマホのLINE電話でもできます。若干のタイムラグはこの際、目をつぶりましょう。

 今回の緊急事態制限では、散歩や近所のランニングを制限していません。むしろ精神環境のためには良いことでしょう。走ることができる人はぜひ近所のランからがオススメです。もちろん散歩もOKです。ただし、人の集まるランニングのメッカような場所に行くことはNGです。人が集まれば感染拡大に繋がります。東京都で言えば、皇居周辺や代々木公園のような場所は、その近所に住んでいる人だけの場所にすべきです。 

 新型コロナウイルス感染拡大の防止のために、働き方や学習のしかたにまで、今までになかった創意工夫が求められています。私たち一人一人の運動も同じです。今までスポーツクラブや施設に頼って運動していた人も、自分のいる環境の中で、自分の創意工夫で体を動かす方法を考えて、体を動かす時なのです。

 

 新型コロナウイルス関連のコラム

プロスポーツの新型コロナウイルスからの出口戦略
プロスポーツの新型コロナからの出口戦略 海外と国内の比較
新型コロナによる夏の甲子園中止の波紋

【 新型コロナウイルス感染拡大のスポーツにおける影響を整理する】
1 - 東京オリンピック・パラリンピックへの影響
2 - スポーツチームの経営の危機
3 - 選手個人と競技団体の危機
4 - 子供や育成年代への影響
6 - 今だからスポーツがやるべきこと

新型コロナウイルス感染拡大に対するスポーツ界の対応(時系列のまとめ)】
4月〜
1月〜3月