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プロ野球選手の薬物使用、逮捕について考える

日本では薬物使用がそのまま解雇に繋がる

 プロ野球千葉ロッテマリーンズの中継ぎ投手、ジャクソン・ジュニア・ランディー投手が、不法に大麻大麻リキッド)を所持していたため大麻取締法違反容疑(所持)で7月9日の深夜に逮捕されたそうです。

元ロッテのジャクソン投手を大麻所持容疑で逮捕 - プロ野球 : 日刊スポーツ

 2016年から2018年まで広島カープでリリーフ投手として活躍し、連覇に貢献していたお馴染みの選手で、広島ファンの中には衝撃を受けた方もいるかもしれません。

 メディアが「元ロッテ」と「元」を付けるのは、警察に7日の段階で大麻所持を確認されていた本人が逮捕前の8日に退団を申し出て、既にこれを球団が受理したからです。しかし、直前の7日まで試合に登板していたのですから、ロッテの所属選手、現役選手と言うべきだと思います。8日に球団が突然の彼の退団を発表した時点では多くの憶測を呼んでいましたが、これが実情だったわけです。

MLBマリファナを禁止薬物から除外

 大麻マリファナの所持や使用が、多くの国で合法であることはご存知の方も多いと思います。それも、最近よく聞かれる「医療用」限定ではなく嗜好品として合法である国も少なくありません。アメリカでは首都・ワシントンDCを含む8つないし9つの州と都市が、一定の制限があるものの医療用以外でもマリファナを所持し、使用することができるのです。中には栽培を認めている州もあるようです。

 MLBでは、昨年秋、リーグ機構と選手会が、マリファナを禁止薬物から除外することで合意しました。意外なことにこの合意で、マリファナよりも違法性の高いコカインが、初めて検査対象となり、オピオイドフェンタニル、合成テトラヒドロカンナビノールなどと一緒に禁止対象になったそうです。

 そして、最も驚くべきことは、この合意によって、選手たちがこれらの禁止薬物の使用が発覚しても、そのまま解雇、契約解除に繋がらないということです。球団と選手との契約はそのままに、決められた治療プログラムを受ければ復帰することができ、薬物使用による錯乱などによって球団に具体的な損害を与えた場合や、決められた治療プログラムの参加を拒否した場合にのみ、契約解除が可能になるそうです。日本のように、薬物所持が発覚するとすぐに契約解除し、「元」の存在にしてしまって、球団との関係を消し去ろうとする対応とはあまりに大きな違いです。

メジャーリーグは処分より治療を優先する

 メジャーリーグが先ほどあげたような合意に至ったきっかけは、昨年7月にあったアナハイム・エンジェルスのタイラー・スカッグス投手の死だそうです。大谷翔平選手の同僚のエースの突然死に、日本でも大きなニュースになりましたが、のちに彼の死因はオキシコドンなどの薬物の使用だったことが明らかになっています。

 メジャーリーグ選手会は、彼のような悲劇を繰り返さないために、処分より治療を優先するルールを作ったのです。

MLB=大リーグ機構、マリファナを禁止薬物から除外 - ロイター

 そもそもアメリカでは、裁判の判決で治療プログラムを受けることが、判決に含まれることが多いようです。日本の罰して終わり、その後の被告の人生や生活などお構いなしの日本の法制度とは大きな違いです。日本のこうした法制度自体が、薬物犯罪の再犯率の高めている可能性もあります。

 もちろん逆にアメリカのような薬物犯罪に対する寛容さが、薬物を蔓延させ、薬物中毒者が銃を乱射して多くの命を失うという悲しい出来事を繰り返させているのも事実です。

  しかし、筆者は、少なくとも球団と選手、チームと選手との関係などにおいては、日本でも、今よりも前向きな関係を築ける時代、チームの立場より選手の生命や人生を大切にする時代が来てほしいものだと思います。