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それでも東京オリンピックは開催される。

新型コロナの感染に関わりなく日本では経済優先の政策を続く

 9月29日、新型コロナウイルスの感染による死者が、全世界で100万人を超えたことが発表されました。

新型コロナウイルスによる死者、世界で100万人超える - BBCニュース

 日本での死者は、9月30日現在累計1,564人。この日新たに9人が亡くなっているそうです。

 とは言うものの、日本での同じ日の新規感染者数は363人。1998人でピークだった8月3日から多少の上下動はあるものの、全体としては確実に大きく減少しています。

 7月から始まったGoToトラベルは活況を呈し、10月からはこれまで除外されてきた東京都民、東京発着の旅行もこのキャンペーンの対象となって、人の移動の一層の拡大が期待されてます。さらに10月中旬からはGoToイート、GoTo商店街のキャンペーンも加わります。さらにスポーツや公演などの大型イベントでも観客数の制限が大幅に緩和されています。

 日本政府は新型コロナウイルスの感染拡大でマイナス基調になった経済を、プラスに修正すことに躍起になっているようです。

 しかし、ピーク時に比べれば感染者数も死亡者も少なくなったとは言え、まだまだ終息には至らず、当初言われていた気温が下がる10月以降の「第二波」についても、まだ実態がわからないままです。

世界的に見ればCOVID-19の感染拡大はまだまだ続く

 世界に目を向けると、新型コロナウイルスの感染拡大は、衰えるどころか益々拡大は進んでいます。

 最初にご紹介した死者数増加のカーブも、欧米各国でロックダウンが行われた4月、5月に比べれば鈍化したものの、9月中も1日平均5000人前後と高いレベル下げ止まりしたままで推移しています。

 感染者数については、8月以降も徐々に増え続け、9月26日には389000人と1日としては過去最高を記録し、その数は4月、5月の3倍以上になっています。

 国別で見ると、感染者数、死亡者数のトップは相変わらずアメリカで、感染者数は累計約718万人、死亡者数は20万人を超えています。いま注目すべきは、いったん封じ込めに成功したと見られていたニューヨーク州でも、感染者が増加傾向にあることです。

 アメリカに次いで感染拡大が続くのが累計約623万人の感染者が確認されているインドで、1日の感染者数ではすでにアメリカを上回っています。中国に次ぐ、人口13.5億人を抱える大国の急激な増加は、今後の爆発的な感染拡大の可能性を示唆しています。第3位のブラジルは、アメリカ同様初期対応の遅れが、その後の感染拡大を止められない理由になっていて、死者数ではアメリカに次ぐ14万人。そのペースはなかなか衰えません。

 ヨーロッパでも、小康状態だった各国で増加傾向にあって、フランス、イギリス、スペインではすでに、4月、5月をはるかに超える感染者が確認されていて、小規模ながらロックダウンが行われている都市もあります。

 このヨーロッパでの感染の再拡大が、人の往来が活発になったためのものなのか、秋に向かって気温が下がってきたためなのか、その両方が理由になっているかは明らかでがありませんが、この傾向が今後他の国々も広がる可能性があります。

地図とグラフでみる新型コロナウイルスの感染者数:ロイター

ワクチンの完成は来年半ば以降とWHO

 期待されている世界各国でのワクチンの開発もまだ未知数のようです。アメリカのトランプ大統領が10月中のワクチンの完成を明言しているほか、各国の製薬会社などからは年内の完成やリリースが公表されていますが、WHO(世界保健機構)では、今後9ヶ月程度はかかる見通しを明らかにしていて、その間にさらに100万人規模で亡くなるという予測をしています。

WHO ”ワクチン開発前に新型コロナで死者200万人の可能性も” | 新型コロナウイルス | NHKニュース

 すでにロシアでは、通常行われている最終段階のテストを行わず、簡略化したワクチンが承認されているそうですが、日本やアメリカ、欧州の基準にあてはめると有効性も安全性も確認されていないようです。

それでも東京オリンピックパラリンピックを開催する。

 そのような状況でも、国際オリンピック委員会IOC)の幹部は次々と東京オリンピック開催に前向きな発言を繰り返し、日本政府や東京都もそれに呼応するように、開催に向けて準備を進めているようです。

 始まりは9月8日のIOCコーツ副会長の発言でした。彼は通信社の電話インタビューに答えて、新型コロナウイルスの状況に関わりなく来年の東京オリンピックの開催を明言したそうです。

東京五輪は「新型コロナに関係なく開催」 IOC副会長 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 IOCは一旦はその発言を打ち消しましたが、25日には東京都や大会組織委員会との会合の席で、バッハ会長自らワクチンに関係なく開催できると語ったそうです。

東京五輪、ワクチンなしでも開催可能 IOC会長 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

 その2日前には、バッハ会長は菅総理大臣と電話で初めての会談を行なっていて、開催に向けた協力が確認されたことが、開催を明言する発言に繋がったのでしょう。

菅総理大臣とバッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長との電話会談|外務省

 さらに、橋本聖子五輪担当大臣は、9月28日に行われた経済人向けのフォーラムで、中止はないと断言したようです。

橋本五輪相、東京五輪・パラの「中止はない」…読売Bizフォーラム中部で講演 : 読売新聞オンライン

 具体的なアクションも始まっています。

 日本政府は10月1日から、これまで全世界を対象としていた入国禁止の措置を緩和し、長期滞在のビジネスや留学を目的とした来日を、1日の人数制限を決めて認めています。今後、来年の東京オリンピックパラリンピック開催を目標に、緩和が進んでいくと予想されています。

 11月には、アメリカ、ロシア、中国を招いてオリンピックに向けたテスト大会として体操の国際大会が行われることがすでに発表されています。大会に参加のために来日する選手やスタッフは本来行われる2週間の隔離措置なく、大会に参加できるそうです。

コロナ拡大後初の国際大会 11月、入国制限緩和へ―体操:時事ドットコム

 さらに大会組織委員会は、9月29日に聖火リレーの概要を発表。延期前の計画とほとんど変更なく行われることがわかりました。中央のメディアではこの点について、批判的な反応もありましたが、地方のメディアはこぞって歓迎する論調で伝えているようです。

「トーチ」6日から巡回!県内21市町村 聖火リレー盛り上げへ:東京夏季オリンピック2020:福島民友新聞社 みんゆうNet

経済効果と感染リスク防止のどちらが優先されるべきのか?

 日本では、感染拡大が抑え込まれていますが、世界の状況は明らかに異なります。オリンピックのような世界規模のイベントを開催することは、現在で言えばアメリカ、インド、ブラジル、ヨーロッパ各国と言った感染が広がっている地域から、感染リスクを日本国内に呼び込むことになります。

 日本では、欧米のように本格的なロックダウンを行わずに感染が抑え込まれてきています。新型コロナウイルスのリスクを軽視する日本人の言動も、ここから来ているようです。しかし、欧米に比べて感染が抑えられ、重症化する割合が低い理由について様々な推測が行われていますが、まだ明らかになっていはいません。理由は分からないということは、今後、日本でも欧米型の爆発的にな感染拡大のリスクがあるということです。海外から新たなウイルスが持ち込まれることがそのきっかけになり得るのです。

 さらに、東京オリンピックパラリンピックをハブにして、感染拡大の著しい国から感染の少ない国へ、世界的な感染拡大のきっかけを作る可能性もあります。

 日本政府は、オリンピック開催を低調が続く日本経済を建て直すための決定打と捉え、そう公言しているようですが、オリンピック開催による経済効果の中心をなしている競技場の新設やインフラ整備はその多くが既に終了していて、新たに経済効果を産むものではありません。今後考えられる経済効果の中心はインバウンド需要ということになりますが、世界的に見て感染の拡大が止まらず、ワクチンの開発、普及も十分で無い中で開催されても、日本政府や経済界が期待するようなインバウンドが発生するはずはありません。

 感染のリスクを犯してまで、欧米から遠路はるばる日本に訪れる人がそれほど多くいるとは思えませんし、日本国内での感染防止対策がよほど徹底されない限り、中国など自国の感染が抑えられている国は、自国にウイルスを持ち込むリスクを伴う観光目的の来日を制限する可能性が高いでしょう。

 政府は領土の保全、国民の生命と財産を守ることが第一の役割です。その中にも安全、安心、健康を守ることも含まれています。IOCという国際的なイベンターに同調して、開催に突き進む今の日本政府の方向性は、こうした政府としての本来あるべき基本的な姿勢と反しているのではないでしょうか。

 私たちは政府が指し示している今の方向性にどのようなアクションを取ればよいのでしょうか。

 7月にNHKが行なった調査では、「中止」「再延期」を合わせて、来年の東京オリンピックに開催に否定的な回答が66%と予定通り開催すべきの26%を大きく上回っています。こうした傾向はその後行われている他の調査でも大きく違いはありません。

五輪・パラ 「さらに延期」「中止」が66% NHK世論調査 | NHKニュース

 果たして、世論と乖離したオリンピックの開催が本当に成功に繋がるのか? 日本政府、東京都、組織委員会、そしてオリンピック、パラリンピックのスポンサー企業は、もっと客観的に考えるべきではないでしょうか。

 

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東京オリンピックの来年開催は既に決まっているのではないか。(7月24日)