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大学スポーツを不祥事から守る方法は?

近畿大学東海大学のスポーツ部で発覚した大麻汚染

 10月5日近畿大学は、サッカー部で5名の部員の大麻の使用が確認されたと発表しました。これに伴ってサッカー部は無期限で活動停止してます。サッカー部が加盟している関西学生サッカー連盟も、処分を検討するとしています。

本学体育会サッカー部の無期限活動停止について | TOPICS | 近畿大学

 10月17日東海大学は、硬式野球部で複数の部員が寮内で大麻を使用していたことを発表しました。これに伴い、硬式野球部は無期限で活動停止となっています。

本学湘南キャンパス硬式野球部部員による不祥事に関するお詫び|東海大学

 いずれも、この文章を書いている段階で大麻取締法違反などでの学生の逮捕などには至っていないようです。

 どちらの大学も状況については、あまり詳しことはわかっていませんが、近畿大学ではSNSを通して大麻を購入。一方で、東海大学では電話での通報によって事態が発覚したこと、22日の時点で部員2名の大麻使用を大学が発表しています。

 東海大学は言うまでもなく、大学野球屈指の名門で、加盟する首都大学野球では1964年の創部以来73回の優勝を誇り、全日本選手権でも4回の優勝があります。OBには巨人の原辰徳監督、菅野智洋投手のほか数多くの選手をプロ野球界に排出していて、26日に行われる今年のドラフト会議でも、3選手の指名が予想されています。その名門での大麻事件は、球界に大きな衝撃を与えた思われます。

 一方、近畿大学サッカー部は現在はあまり上位での活躍はないようですが、かつては元日本代表の山口敏弘氏をはじめ数多くのJリーガーを排出しています。 

広がる薬物使用を止めるのは本人の意思次第

 近年、若年層で禁止薬物の使用が急速に広がっていると報道されています。

 今年1月には日本大学ラグビー部の学生が、東京都渋谷区の路上で大麻を所持していたとして、大麻取締法違反の疑いで警視庁に逮捕されています。

 薬物使用の拡散の原因としてあげられているが、今回の近畿大学のようにSNSなどを通した情報の氾濫とネット経路からの購入が可能になって、より身近な存在になっていることが上げられています。大麻に限って言えば、昨今の大麻が無害であると言う情報の拡散の影響もあると思われます。

 では、どうしたら止められるのか? それは学生個人の一人一人の自覚次第と言うことになるのではないでしょうか。

 ネットを中心に様々な情報が氾濫している中で、年齢を問わずその流れを止めることはできません。警察などが徹底的な取り締まりを行なって、禁止薬物の流通や供給を撲滅することができるまでは、年齢問わず、どうすることもできないでしょう。

 特に今回の近畿大学のように、新型コロナ感染防止のために時間に余裕ができて、興味本位で購入するような場合には外から止める方法はありません。    一方、東海大学では、当該学生2人を付属病院で更生に向けた取り組みを始めているという報道もあります。これが事実であれば、もう少し依存度が高いのかもしれません。寮生活をしている彼らの異常を周囲の学生が全く気づかなかったはずはなく、もう少し早い段階で、周囲に止める勇気が必要だったかもしれません。

大麻摘発137人、過去最多 30代以下の若年層106人 沖縄県警「誤った認識拡散」(琉球新報) - Yahoo!ニュース

活動停止を連帯責任と捉えるのは単眼的な見方

 今回、どちらの大学でも部活の活動停止の処置をしています。両大学の活動停止がどれくらい続くかはわかりませんが、新型コロナウイルス感染で年度前半の活動ができなかったために、4年生にとっては最後の公式戦の機会だった秋のシーズンを失ったことになります。

  こうした活動停止の処置に対して、活動停止=連帯責任という捉え方で、反対の意見が数多くあります。中には人権侵害とまでいう教育評論家もいるほどです。

違法薬物使用で連帯責任「全くの人権侵害」尾木ママ - 芸能 : 日刊スポーツ

 しかし、それは教育的な観点からの単眼的な意見と言えると思います。大学は教育機関ですが、常に教育的な視点だけでアクションをとるとは限りません。組織のマネジメントやリスク管理の視点で見た時には、今回のようなトラブルが発生した時に最初に必要なのは再発防止策と、その再発防止策を内外に宣言することです。

 その意味で、活動停止は短期的には最も効果のある策です。時間稼ぎとも言えますが、その間にさらに進んだ再発防止策を準備することもできます。

 そもそも、同じ部内で犯罪に直結するような大きなトラブルがありながら、昨日と同じ活動をしていることは、あり得ないのではないでしょうか。

すでに大学スポーツの現場は教育現場とは言い難い

 筆者は、大学で起きている多くの問題点の中には、教育的な視点で解決することが難しい場合が多いのではないかと思っています。大学スポーツで発生している数々の問題もそうした教育的な視点では解決できない問題です。

 その理由は、そもそも現代の学生の多くが、社会倫理、社会的な規範などの教育を受けるために大学に来てはいません。企業などへの就職を目的に、就職活動の一環として、またそのための技術習得を目的に大学にいると考えてよいと思います。東海大学硬式野球部のような強豪の運動部での活動も、就活の一環、そのための技術習得や機会を得るための場だと考えても良いでしょう。

 また、今回の大麻の使用では学生がトラブルの当事者ですが、昨今発生している多くの事件での当事者は指導者側です。大学スポーツの現場には、教育に相応しくない人材が少なからずいるということになるのではないでしょうか。

 大学は教育機関として、本来教育的な観点から人選を行なって、学生の指導にあたらせるべきです。しかし、学生の減少などで生き残りの競争の只中にいる現在の大学の多くは、経営至上主義に陥っています。その中で大学のPRの先頭に立つ運動部は勝利やメディアに露出することが、人事の基準になっているだろうことは想像に容易いです。

大学スポーツにはコンプランスの意識の徹底を

 それでは、大学スポーツの現場でのトラブル発生を減らすためにはどうすれば良いでしょうか。

 それは、指導者、学生双方に一般企業と同じようにコンプライアンスの意識を徹底することだと筆者は考えています。但し、企業のコンプライアンスの概念は「コンプライアンスの欠如→組織の不利益→個人の不利益」ですが、このような間接的かつ抽象的な概念の理解や徹底は学生はもとより、多くの大学スポーツの指導者には不可能に近いでしょう。

 ですからコンプライアンスをもっと身近でダイレクトな概念とするために、「コンプライアンスの欠如=自分自身の不利益」という概念を植え付け、コンプライアンスに反した場合には、組織だけでなく、個人一人一人も不利益があることを植え付けることです。自分自身や自分に関わる人がコンプライアンス違反をすることは、自分自身がキャリアを失ったり、就職活動で不利になるなどに、危機感を煽ることが近道だと思われます。学生にとっては卒業後就職してからコンプライアンスに直面するよりも、早い段階から意識づけされることがメリットに繋がるかもしれません。

 そうしたことを可能にするためには、大学トップや大学スポーツを管理する立場の人物が、日頃からコンプライアンスへの高い意識を持ち、日常的に危機管理を行うことが必要とされます。