スポーツについて考えよう!

日々、発信されるスポーツの情報について考えよう

アジアカップ、イラク戦、まさかの敗戦は誰の責任か?

0−2のハーフタイムで監督がすべきこと

サッカーの試合で、ハーフタイムを0−2で迎えたら、監督は後半に向けてどのようなベンチワークをすれば良いでしょうか。

ヨーロッパや南米の国内リーグでは、ハーフタイムを2−0で迎えたら、試合は決まったも同然と言われてきました。

近年では、主にボールの進化によって得点力が上がり、必ずしもそう言い切れなくはなってはいますが、それでもハーフタイムに0−2という状況は、サッカーではかなり決定的な状況であることは変わりはありません。

言い換えると、0−2で負けているチームが逆転するためには、ハーフタイムで劇的な手を打たないといけないということを表しています。

1月19日に行われたイラク戦での森保一監督は、どのような手を打ったでしょうか。

センターバックの谷口選手に代えて同じセンターバックの富安選手を投入。

そして、前半無得点の攻撃陣は、それまでの浅野選手の1トップから、前列に右から久保選手、浅野選手、伊東選手を並べた3トップ、2列目に南野選手に置くポジションに変更しました。

記事をチェックすると、前半ボランチだった守田選手を2列目に上げたという記事もありますが、中継の画面からの印象では、変更された彼がポジションに相応しい動きがあった印象はありません。

果たして、このベンチワークで、2点差を挽回し、後半だけで3点以上を取って勝利できると、森保監督は考えたのでしょうか。

森保采配への批判が始まった。

この敗戦の原因に森保監督の采配をあげる記事が数多く上がっています。

実は、一昨年のカタールワールドカップの以前から、サッカーを専門に取材してきたライターを中心に、森保監督の采配に否定的な人は多かったのですが、テレビを中心にした大メディアの森保賞賛の大合唱にかき消されてきました。

日本のスポーツ界は、日本の政治のシーン同様に、自由闊達な意見の発信、交換は非常に難しく、特に監督を含めた現状の体制への批判には、メディア関係者もかなりの決意と勇気が必要になります。

このため、今まで沈黙を守ってきた人たちが、ここぞとばかりに、森保監督の采配に疑問を投げかけています。

イラク戦の試合の敗因として、ベテランサッカーライターの杉山茂樹氏は、かねてから言われている森保監督の攻撃的なセンスの無さを記事であげています。

日本代表、イラク戦の敗因は明確 前線4人のポジションの設定が悪すぎる | web Sportiva

前半の攻撃陣4人のポジションについて厳しい意見が書かれていますが、筆者も同様の意見です。

浅野選手、久保選手という前に向いてプレーすることを得意とする二人の選手を真ん中に縦に並べては、ボールのおさまりどころがありません。これは杉山氏が指摘している通りです。

久保選手は、自チームではトップ下よりも右サイドの方が気持ちよくに動けています。

左サイドの南野選手は、外に開くウイング的な動きはありません。基本、ゴールに向かう動きだけですから、相手のディフェンスはとても守り易かったのではないでしょうか。

なぜ、ベトナム戦で2ゴール、1アシストだった南野を、ベトナム戦同様トップ下で使わなかったのでしょうか。南野選手の1トップでも良かったかもしれません。

この攻撃的な選手のポジションについては、文春オンラインも、元日本代表の城彰二氏のインタビュー記事で『「トップ下久保、左に南野、右に伊東のシステムで何がしたいのか」森保監督の“ナゾ采配”に城彰二が呈した苦言』という長いタイトルの記事で、問題点を指摘しています。

「トップ下久保、左に南野、右に伊東のシステムで何がしたいのか」森保監督の“ナゾ采配”に城彰二が呈した苦言《アジアカップ》 | 文春オンライン

タイトルに「サッカー日本代表、やはり最大の弱点は監督の能力の低さ。」とまで掲げたのは、サッカー専門WEBメディアの「FOOTBALL CHANNEL」です。日頃から煽り記事が多い印象の同メディアですが、このタイトルはかなり刺激的です。内容的には専門メディアならではの厚みのある記事にして欲しかった印象です。

サッカー日本代表、やはり最大の弱点は監督の能力の低さ。謎采配だらけのイラク戦、国際タイトルは夢【アジアカップ2023】

劣勢の試合を放置したベンチ

このブログでは何度も書いていますが、森保監督のベンチワークは、スピード感とリアリティが低い。特に想定外になった時に対応ができない。対応が遅いのではなく、できないのです。

序盤の失点はどんな試合でもあり得るでしょう。特に相手が、日本をターゲットにして分析し、完全なチャレンジモードでスタートから攻勢を仕掛けてきた時に、この試合のような失点は十分あり得ることです。

センターバックの一人をサイドに誘い出し、連携の悪い日本の右サイドからクロスを入れて、アイメン・フセインに合わせる攻撃は、スペイン代表でのコーチの経験もあるヘスス・ガルシア監督のデザインされた攻撃だったはずです。

問題はその後です。1点ビハインドの日本は、デザインされたスムーズな攻撃がほとんどできず、結局、前半は枠内にシュートを放つことすらできなかったのです。

前述したポジションの問題に加えて、屈強なイラクの選手の前線からの激しいチェックに、安定してボールを前線に送ることさえできませんでした。

しかも、イラクのディフェンスの高い位置でのラインコントロールと、そこからのロングフィードで攻守に混乱していました。

もちろん、ピッチ上の選手の中で、こうした問題を解消できれば良いのですが、この試合では残念ながら、そうはなりませんでした。

そもそも、デザインされた攻撃がほとんどできない前半の様子を見ていれば、ハーフタイムに行った4人の攻撃の選手のポジション変更は、前半の試合途中に行うべきだったはずです。十分にそれは可能だったはずです。

にも関わらず、ベンチは何も手をうたず時間だけが経過して、そのまま前半アディショナルタイムの失点に繋がります。しかも、基本的には1点目と同じポイントを突かれています。

こうした流れからすれば、2点目は当然の失点だったように思えます。

ようやく動いたハーフタイムの対応は?

ハーフタイムに、攻撃4人のポジションをあるべき場所に戻した効果は、結果に繋がることはありませんでした。

富安選手と谷口選手を交代させた効果もはっきりしません。何しろ、ターゲットだったはずのアイメン・フセイン選手が、後半のピッチに立たなかったのですから。

交代したその富安選手が、高い位置でプレーしていたのは、ベンチの指示だったのでしょうか。

試合のハーフタイム、ロッカールームに下がった選手たち全員に、多くの監督はすぐに声をかけます。

中には、先に選手たちに自由に話をさせる監督もいますが、日本人監督にそれができる監督はなかなかいないでしょう。選手の話が監督の想定と違った方に行った時に、収集することが難しいからです。

監督が話し始める時に、前半の総括をして、後半の対策を話しするのか、前半の総括を飛ばして、いきなり後半の対策を話し始めるかは、監督によって異なりますし、ハーフタイムを迎えた時の試合の状況によっても違います。

いずれにしても、監督は選手全員に向けて何かを話さなければなりません。その中には、選手の交代もポジションの変更も含まれます。

森保監督は、おそらく、十分に準備をして言葉を発するタイプではないでしょうか。だとすれば・・・

ハーフタイムでの選手交代、ポジションの変更は、1点差の時に用意した内容だったのではないでしょうか。

それを感じさせられたのは、富安選手の投入です。

後半スタートで交代で入る彼には、ハーフタイム前に出場を告げているはずです。しかし、その後イラクの追加点が入ってしまったのではないでしょうか。

相手のエース18番がアディショナルタイムにゴールを決めた直後、足の付け根を痛めて、足をひきづっていたことに気づいていたのでしょうか。

1点差と2点差では、対応が異なるのは言うまでもなくありません。2点ビハインドの状況ではもっと大きな刺激が必要だったはずです。

前半に2失点した衝撃は大きかったかもしれませんが、最も大きな課題はディフェンスではなく攻撃だったのではずです。

何より、最低3点を取らなけれならない状況で、投入すべきは攻撃の選手で、必要だったのは攻撃に大きな枚数を増やすことだったはずです。

それが全選手への強いメッセージにも繋がるからです。

久保と堂安は同時にピッチに立つ必要があった

後半から攻撃的なポジションを変更しても、日本は決定機を作ることができません。流れは終始イラクペースだったと言えるでしょう。

後半16分、ようやく、堂安選手と上田選手を投入します。

しかし、久保選手を下げて堂安選手を入れても、状況の改善には繋がりません。

テレビで観戦していたみなさんも、攻撃が1枚足りないと感じていたでしょう。

堂安が攻撃の起点にいる時に、ゴール前には堂安はいませんし、堂安がゴール前にいる時に、起点に堂安はいないのです。

日本代表が3点を取るためには、有能なパッサーでありゴールゲッターである二人が、同時にピッチに立っている必要があったのです。

ライターの杉山氏が書いていた攻撃的なセンスのなさは、ここでも表れていたかもしれません。

もしかすると、2点ビハインドという想定外の状況に、森保監督の頭の中はパニックになっていたかもしれません。

それを冷静に見せようとするがために、非常事態であるにも関わらず、ルーティーンのようの交代しかできなかったのかもしれません。

イラク戦の敗戦が大会全体に及ぼす影響は計り知れない

24日に行われるグループリーグ最終戦インドネシア戦は、流石にまさかないでしょう。

しかし、日本から2点を奪ったベトナムに1−0で勝利したこのチームを侮ることはできません。

森保監督のプランでは、イラク戦で決勝トーナメント進出を決めて、インドネシア戦ではメンバーを落とすはずだったはずです。

長期にわたる大会では、選手のコンディションをキープするためにこうした調整は必要です。

しかし、イラク戦の敗戦で、インドネシア戦もベストメンバーで望まなくては行けなくなりました。

この影響が、決勝戦まで進むとして残る4試合にどのように表れるかは分かりませんが、目指している優勝にマイナス要因ができたことは間違いありません。

そして、もう一つの影響は、グループ1位で突破する予定が、2位で通過することによって、対戦相手が想定と変わることです。

2年前のワールドカップでは、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦で、グループリーグのドイツ戦やスペイン戦で見せた緻密なゲームプランが消えました。

ドイツとスペインと同組のグループリーグで、日本が1位通過するのは森保監督にとっても想定外だったはずです。

想定外の事態に弱い森保監督が、どのようにして日本代表を勝利に導くのか、これからの試合は別の視点でも見ていく必要がありそうです。