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マラソン、競歩は本当に札幌でやるの?やれるの?

 いよいよ、明日30日から東京オリンピックのマラソン競歩の札幌への会場移転についての調整会議が開かれます。

 IOCが自らの体面とスポンサーへのダメージを最優先に考えた結果の行動であることは十分想像できます。本当にアスリートファーストで考えていれば、もっと早く手を打っていたでしょうし、そもそも真夏の東京で開催するなどと言う無謀な判断もなかったはずです。IOCのそんな思惑はともかく、選手全員のことを考えれば、その後の心身のダメージも含めて、少しでもコンディションの良い場所で開催する方が良いことは理解できます。

 しかし、IOCの開催都市の意向も都民の気持ちも無視した、一方的な進め方には素直にうなづくことはできません。夏の東京の暑さを知りながら、「東京でオリンピックを。マラソンを」と悪コンディションをなんとかしよう、選手のため、素晴らしい競技のためにと準備をしてきた関係者の思いを考えるとやはり今更の感はぬぐえません。「うちの前をマラソン、走るのよ」と楽しみにしていた方もたくさんいらっしゃるでしょう。なんたって日本人はマラソン大好きですから。

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 少なくとも日本の選手たちは東京で走るつもりで準備をしてきて、9月のMGCやドーハの世界選手権など暑いレースの成績で選ばれた選手たちにとっては、「マジかよ」という感じだと思います。札幌に移転し、気温、湿度が下がることで高速レースになった場合、日本選手の不利を指摘する声は多くあります。

 もろろん、アスリートファーストという大号令の前には、日本選手だけのアドバンテージなどなんの価値もないのですが、でもやはり黙ってはいられない気持ちになります。

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 小池知事も今更と訴えますが、それを言うなら、東京都も組織委員会ももっと真剣に暑さ対策しておけよという記事もあがっています。対策をしなくてはいけないとわかっていても、具体的にはほとんど何もできていないし、自慢の遮熱塗装の効果を否定する検証データも出されているという指摘です。日本の行政は、商品を作った会社が出すデータは鵜呑みにするのに、大学や研究機関が出す検証データはなかなか認めようとしないですよね。本来は逆であるべきだと思います。もう一つ言えば、遮熱塗装はそもそもオリンピックのためではなく、東京全体の温暖化対策のために導入されたはずですから、それだけで札幌に移転したら対策費が無駄になるという意見は無理がありますね。

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 上の記事の次の部分が面白いですね。

IOCが「札幌開催」へ転換したのは当然というか、国際的な商業イベントを仕切る者として極めて真っ当な判断なのだ。 

 オリンピックを「国際的な商業イベント」と言い切ってしまっています。その国際的な商業イベントとしてリスクのある東京開催をやめて札幌でやろうということになって、札幌市、北海道も当初は満面の笑みを讃えていましたが、ここに来て表情が硬くなってきたように思えます。札幌ドームをスタート・ゴールの会場にしようと言っていたのが、どうやら予算的に難しいことがわかると、北海道マラソンと同じ大通公園をスタート・ゴールする案が戻ってきました。ただし、記事によると大通公園では大規模なスタンドを作るのは難しいというのです。それでIOCはOKするだろうか? 確かに周回トラックは無理ですが、ボストンマラソンのような海外レースのゴールのように、選手が走る直線のコースを両脇から挟む形のスタンドなら十分可能に思えるのですが、いかがでしょうか? あとは予算次第です。

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 この記事の後半にとても気になることが書かれています。

払い戻し手続きの課題も浮上。チケットごとに札幌転用希望の有無など、個別に対応するのは難しいという。陸上6種目、3つの表彰式が見られる女子マラソンチケットは、さらに煩雑な払い戻し作業となるため、組織委は対応策の検討作業に追われている。

  これは、既にチケットを購入した人は場合によっては泣き寝入りしかないということでしょうか。だからと言って、札幌に席を用意したから札幌まで勝手に言ってくださいと言われても、それも困りますね。販売したチケット分の責任すら負えないとは、「国際的な商業イベント」としてあり得ない状況に陥ろうとしているのかもしれません。

 会場、チケットに加えて、選手、スタッフなどの宿泊施設の確保の問題もあります。北海道観光のトップシーズンであるこの時期の札幌のホテルは、おそらく既に多くは満室です。マラソン競歩も、とても多くの警備やボランティアを必要とする競技です。その手配はいまから間に合うのでしょうか? 北海道観光のトップシーズンは、東京ー札幌間の大人数の移動もままならないはずです。どちらも組織委員会のパートナー企業である旅行代理店大手三社の腕の見せ所ではありますが。

 そして、費用の問題もすぐには解決しないかもしれません。あるアンケートによると、すでに東京都民の多くは札幌での開催費用に東京都が予算を出すことにNOという意思表示をしています。もともとある予備費を使うという案も聞こえていますが、予備費を使うのはまだ時期尚早ではと思います。暑過ぎる東京の夏はマラソン競歩だけにとってだけではありません。来年春以降の長期予報によっては、さらなる暑さ対策の必要が発生するかもしれません。その時に新たに必要となるコストは一体誰が負担するのでしょうか。せめて、予備費はそんな時のために残しておいてほしいと思います。

 結局、IOCはアスリートファーストのために札幌開催実現にあらゆる手を尽くしたが、時間的に準備が間に合わなかったというオチもあるのかもしれません。IOCはそれでスポンサーに言い訳が立つというわけです。

 明日からの調整会議では小池知事は、どのような手に打って出るのでしょう。もし、調整会議が不調に終わり、小池知事とIOCが決裂した場合に、次にどんな展開があるのでしょうか? そこにはまた別の興味が湧いてきます。

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