オリンピックとは何か？ 開催都市とは何か？を考える機会に
10月30日から11月1日までIOC、東京都、組織委員会、そして日本政府が参加して行われた調整会議で、東京オリンピックのマラソンと競歩が札幌で開催することが決まりました。これについて国内は賛否両論揺れています。国内ばかりではないでしょう。
アスリートファーストを掲げて東京より気温湿度の低い札幌に移転したわけですが、アスリート自身や指導者の多くからもたくさんの異論が出ています。東京の暑さは今に始まったことではなく、この段階まで状況を放置した上に翻意したIOCと組織委員会の責任は大きいと言わざるを得ません。
そして、開催地変更の影響を受けるのは選手や指導者だけではありません。
例えば、マラソンコースが予定されていた沿道の店舗は、実施当日や前後の賑わいを見込んで、店舗の改装など資金を投じたかもしれません。しかし、マラソン競技が行われないことで、最終的にその資金を回収できなくなる可能性もあります。コースの近くに住んでいるお年寄りは若い頃に見た前回の東京オリンピックの思い出しながら、来年も沿道で応援することを楽しみにしていたかもしれません。その機会も失われました。
42.195kmの沿道にはそうした人々の数々の思いが詰まっているはずです。特に日本人はマラソンにかける思いが強く、東京という街の世界への発信ととも様々期待が寄せられていたことでしょう。都民にとっての期待から失ったことに対する喪失感。それはアスリートファーストというお題目では拭いきれない大きな傷を残したかもしれません。
日本全体のことを考えれば、札幌での開催はプラスの面もあるでしょう。近年、東京一極集中がさらに進んでいることを考えれば、良いことかもしれません。
北海道、特に札幌の人たちは、予定されていたサッカーに加えて新たにオリンピックを間近に体験する機会ができました。一生に一度かもしれない感動の機会を得る人がたくさんいることは東京で開催しても札幌で開催しても変わりません。
そして東京で開催される時に比べて新しいお金を生み出すことも間違いありません。選手や関係者の移動や宿泊も含めて、いわゆる経済波及効果では当初計画にプラスが見込まれるはずです。実は札幌開催のために追加にかかる費用もその一部です。
ですが、おそらく、例年開催されてる札幌夏祭りは、当日だけでなく準備や警備を考えれば昨年までと同様の開催は難しいでしょう。期間や規模の大幅な変更を余儀なくされるかもしれません。いつもの夏の札幌を楽しみしていた観光客にとって、来年の夏の札幌はどのように映るのででしょうか。
2012年のロンドンオリンピックの際には、オリンピック期間中のロンドンに観光に訪れる人が例年に比べて大幅に減ったというデータが残っています。2004年のアテナオリンピックの際にはギリシャ全体で観光客が減っています。どちらも、オリンピック期間中の喧騒が避けられたこととホテル代などの高騰が理由だと言われています。どちらも観光のトップシーズンであること共通しています。来年夏の札幌でも同様のことが起きるかもしれません。
今回のことで私たちは、改めてオリンピックとは何か、開催都市とは何かということ考える機会を得ました。
まず、開催都市とは何か？ オリンピックの開催は、IOCと開催都市、その国のオリンピック委員会が開催都市契約を結んで行われます。しかし、今回のようにIOCの事実上独断で契約を結んだ都市以外でも開催ができるのであれば、開催都市のとってこの契約によって守られるものは何もないと言っていいでしょう。開催都市とはまずそういうものであるということを知ることができました。
にも関わらず、オリンピックを開催する意義はなんでしょう。それをこれから私たちはしっかりと考えていかなくはなりません。このブログでは、オリンピックとは何かと一緒に開催都市の意義についても、みなさんと一緒に考えていきたいと思っています。
最後に、IOCのバッハ会長が小池都知事に提案したというセレブレーションマラソン。IOCから小池都知事にお土産ですね。これを会議の席上でコーツ委員長から発表するのではなく、事前にバッハ会長からの小池都知事にメールで提案されたという形で、小池都知事の口から発表するあたり、完全な政治的なパフォーマンスと言えましょう。
気持ちの上にも経済的にもオリンピックで正式な競技として開催された時と比べようもありません。そもそも、それでオリンピックのマラソンの代わりになるのであれば、多額の費用をかけてオリンピックを開催すること自体に意味がありませんね。バッハ会長も小池都知事も都民や国民がそんな子供騙しにだまされると思っているでしょうか？ 小池都知事も同じパフォーマンスをするのであれば、東京都民をバカにするなと言って、提案を蹴飛ばす勇気を持って欲しかったと思います。
