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トップアスリートの社会性をいかに育むのでしょう

 女子ゴルフで、あるベテラン選手がツアーの会場となったゴルフ場のスタッフに暴言を吐いたことで、日本女子プロゴルフ協会の小林浩美会長が謝罪をすることになりました。そして暴言を吐いた選手の言動もさることながら、その原因となった問題についても注目されています。

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 この記事に書かれている通り、選手が使っていたゴルフ場の風呂場にバスタオルが置いていなかったことが暴言の原因ということですが、その理由が毎年、大会で使用するとバスタオルが紛失するのでツアー主催者と大会の事務局が相談をして今年は置かないことにしたという。おそらく、バスタオルは置いていないから自分で持ってくるようにと言う通達は、理由も含めて選手にされているでしょうから、この選手の不注意もあると思います。それより、バスタオルが盗まれる状況はおそらくこのゴルフ場、この大会だけではないでしょう。結局、選手の意識、常識の問題です。この辺りの原因をプロゴルフ全体の責任として詳しく紐解いてみた記事がこちらです。

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 この記事にある通りゴルフ場の洗面所、浴場にはふんわりとクリーニングされたタオルが綺麗にたたんで積み上げてあります。バスタオルもフェイスタオルも使い放題です。大きなバッグを持って入った選手たちはそのタオルを自分の物のようにバッグにいれて持ち出すのでしょう。でも、そのゴルフ場のにお金払って使っている会員のみなさんは、使い終わったタオルはクリーニングドロップに落として、浴場をあとにするのです。この違いは、モラル、マナー、常識の問題です。記事では「ゴルフの世界と、一般社会の間には、多くの“常識のズレ」と書かれていますが、ズレているのは選手たちであって、選手レベルとその他の社会のズレです。そうした悪行をする選手たちは、おそらくコース上でも会員のみなさんが顔をしかめたくなるような行動をしているはずなのです。

 昨年は、男子プロのまさにトップ中のトップと言える片山晋呉選手がプロアマでのスポンサーにとった態度が原因で、世間から厳しい目が向けられました。もともと、片山選手の言動を問題視する人は多かったのですが、彼の強さが周囲の口を封じていたのでしょう。やはり成績が下降気味になると、こうしたことが噴出してきます。

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 こうしたトップアスリート(日本のゴルフのツアーブロの全てがトップアスリートとは思えませんが)の非常識はきっと、スポーツの世界のどこにでもあるのだろうと思います。

 昔、筆者がスポーツの取材現場にいた頃、高校からあるJリーグチームに入ったばかりの顔見知りのJリーガーに駅で偶然会って、愕然とすることがありました。切符の自販機の前に立っていた彼は、私に切符の買い方を聞いてきたです。特別な切符ではありまえせん。その駅から、渋谷か新宿、繁華街の駅までの切符だったと思います。聞くと、自分で切符を買って電車に乗るのは初めてだと言うのです。彼の18年で記念すべき瞬間に私は立ち会ってしまいました。

 子供の頃からサッカーチームに入っていて、小学校がない日はいつもチームで団体行動で、移動の多くはチームバス。家族で出かける時は親が切符を買ってくれる。高校時代は学校の近くの寮での生活だったので、電車に乗るのは遠征の新幹線などだけで、もちろん切符を自分で買うことはありません。こうして高校を卒業するまで、自分で電車の切符を買ったことがない社会人が出来上がるのです。子供の頃から純粋培養されたエリートアスリートがいかに狭い世界で育っているか、我々の常識が通用しないこと伝える、ちょっと微笑ましいエピソードです。

 流石に、同じJリーガーでも大卒のリーキーの場合はここまではひどくはありません。大学では高校までに比べて自由な時間も多いし、サッカー以外の友達もできます。それはサッカーだけでなく、他の競技でも同じだろうと思います。特にデートをするようになると、自分の意思で切符を買わなければいけないし、自分で店を選んで、お金も払う必要があります。そうやって少しずつ社会性を身につけていくのでしょう。でも、女子の競技の場合は事情が違うような印象があります。男子よりも競技漬けの場合が多いようです。

 今回のトラブルに居合わせ、新聞の自らのコラムで問題を指摘した岡本綾子さんは、ツアーを統括するLPGAの選手教育の必要性を指摘します。もちろんそれも必要で、1日も早くスタートして欲しいと思いますが、あくまで対処療法に過ぎません。根本は一人一人の常識、社会性によるものだろうと思います。ですから常識や人格が培われる年代の時に、優れた競技者として適性の一つとして、一般の人と同じレベルの社会性を育む環境や方法を考えていく必要があるのだろうと思います。