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安倍首相のイベント中止要請はIOCからのメッセージへの返信か

ようやく決断した安倍首相とそれに対応したイベント

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 昨日2月25日にJリーグが発表した公式戦延期についての記事をアップして(アップしたのは→「 スポーツ界の新型コロナウイルス対策について考える 」、ネットを見たら「安倍首相、2週間イベント中止を要請」の文字。筆者は「やっとかあ」と「このタイミングか」という2つの感想です。安倍首相が言う「全国的なイベント」の定義は明確ではありませんし、2週間という期間の根拠も見えませんが、少なくとも政治判断の大きな一歩が踏み出されたことは間違いありません。これで、あと一歩の決断ができなかったり、知らんぷりしてやっちまえと思っていたスポーツを含むイベント主催は、行動に移さなければならなくなりました。強制力がないとは言え、無視する勇気があるイベンターがいるとは思えません。

 早速、東京と大阪のドームで今日26日に行われる予定だった、perfumeとEXELEのライブの中止になっています。安倍首相の要請が無ければそのままやる気だったことにはある種、驚きがあります。また、スポーツではなかなか動きが見えなかったVリーグも29日のファイナルの無観客試合と8日までの残り試合の中止の発表しています。

 すでに多くの自治体がジャンルを問わず、主催や関連するイベントを中止、延期をしていますが、安倍首相の要請でさらに急加速することになるでしょう。

 

【安倍首相の中止要請以降公表された主なスポーツの対応】

プロ野球日本野球連盟
 2月29日から3月12日までのオープン戦72試合を無観客で開催
 2020年度春季非公式試合(オープン戦)・春季教育リーグにおける無観客試合の開催について

ラグビートップリーグ
 2月29日、3月1日、6日、7日に開催されるリーグ戦計16試合を延期
 ジャパンラグビー トップリーグ2020 第7節・第8節開催延期のお知らせ

Bリーグ(男子バスケットボール)
 2月29日から3月11日まで開催予定のB1、B2リーグ戦全99試合の延期
 B.LEAGUE 2019-20シーズン B1・B2リーグ戦開催延期決定のお知らせ  

Wリーグ(女子バスケットボール)
 2月29日から3月15日までのレギュラーシーズン全35試合の中止
 新型コロナウイルスによる対応について(第3弾)~第9週以降のレギュラーシーズン中止のお知らせ~

Vリーグ(バレーボール)
 男子ファイナルステージの無観客試合と男子divison2の残り試合の中止
 2019-20V.LEAGUE 新型コロナウイルス等感染症に対する対応について

Tリーグ(卓球)
 3月14日に開催予定のプレファイナルの延期
 ノジマTリーグ 2019-2020シーズン プレーオフ ファイナル 開催延期のお知らせ

大相撲
 住吉神社での土俵入りの中止
 大相撲 住吉大社での横綱土俵入り中止 新型ウイルス拡大防止/NHK

いずれも2月26日現在

これまで決断できなかった安倍首相を翻意させたものは

 昨日、厚生労働省が「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が作った見解を元に指針を発表したばかりなのにも関わらず、安倍首相が「要請」に踏み切ったのはなぜでしょう。昨日と今日とで違うことがあるとすれば、IOC委員のディック・パウンド氏のあの発言です。

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 国際オリンピック委員会(IOC)のベテラン委員であるパウンド氏のコメントは、東京オリンピックの中止や開催地の変更も含めて可能性があり、その判断の期限は開幕3ヶ月前だというものです。そして彼の「自信をもって東京に行けるかどうか考えなければいけません。」という発言の意味をよく考えなければなりません。東京に行く選手、観客が安心して東京に行ける状態になっていなければ、開催できないという意味と取ることができます。

 昨日から今日にかけて疾病対策の世界的な権威である2つの組織、世界保健機関(WHO)とアメリ疾病対策センター(CDC)が相次いで、パンデミックの可能性を指摘しました。もちろん、パンデミックの可能性は、発信源である中国をはじめ日本以外にも、韓国、イラン、イタリアなど多くの国が想定されるとは思います。日本が可能性の高い国の1つであることは間違いありません。

 こうした状況下でも、IOCトマス・バッハ会長は、パウンド氏の発言後に予定通りの東京開催に前向きな姿勢を見せ、組織委員会はいまだに中止の可能性を全く考えていないというコメントを出しています。しかし、安倍首相とその周辺は、パウンド氏の発言に違うメッセージとして受け取ったのではないでしょうか? IOCとしてはスポンサーや放送権の問題から気安く中止や延期について言及することはできません。だから、パウンド氏にバルーンをあげてもらって反応を見たという可能性も十分あるのです。

 最悪の事態を想定してそれに備えるのが危機管理です。IOCがそれができないお気楽な組織だとは到底思えません。

オリンピックまでに安心して訪れることができる東京になっているか

 2つの疾病の世界的な権威がパンデミックの可能性に言及したことで、暖かくなれば収束に向かうと言っていた国内の多くの専門家たちも、収束にはまだ時間がかかると言い始めているようです。パウンド氏の言及したオリンピック開幕3ヶ月前に、日本はどのような状況になっているのでしょうか。

 さらに、もしIOC東京オリンピックを予定通り開催したとしても、予定通りトップレベルの選手たちが参加し、世界中から観客が集まるとは限りません。特の欧米のアスリートは家族思いの人が多いですから、自分が感染するリスクや自国にウイルスを持ち帰って、家族や周囲に感染させる可能性があるとすれば、出場を辞退する可能性は少なくないでしょう。観客も同様です。せっかくチケットを持っていても、感染リスクを犯すなら、来日しないという選択肢を選ぶ人も多くいるはずです。

 これからの数ヶ月、日本に何が起こり、私たちには何ができるのか。パウンド氏の言葉を借りるなら、新型コロナウイルスが仕掛けてきた戦争に、私たちは否応無しに立ち向かわなければならないのです。それはオリンピックやパラリンピックという一時的なお祭りのためにではなく、私たちの安心した日常生活のためです。

 

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