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東京オリンピックの来年開催は既に決まっているのではないか。

東京オリンピックの来年開催は既に決まっているのではないか。

7月23日、2020東京オリンピック開幕まで1年

 新型コロナウイルスの感染拡大が本格的になってきた中で、今日7月23日で、延期された東京オリンピックの開幕までちょうど1年となりました。コロナ禍がなければ明日、開会式が行われていたと考えれば、日本だけでなく世界が想像もしなかった半年を送ってきたことわかります。

 昨年の7月24日には、大々的な1年前イベントが各地で行われていましたが、今年はごくわずか。開催しているところも無観客でオンラインがメインのようです。

・大会組織委員会が国立競技場から発信するメッセージ

本日20時よりライブ配信:「一年後へ。一歩進む。~+1(プラスワン)メッセージ~ TOKYO 2020 」  

 果たしてオリンピックは本当に1年後に開催できるのでしょうか。各メディアが行なっている世論調査では、来年の開催に否定的な意見を持つ人の割合が徐々に多くなっているようです。

五輪・パラ 「さらに延期」「中止」が66% NHK世論調査 | NHKニュース

新型コロナウイルス感染下で五輪開催に必要な条件とは

 普通に考えて、1年後にオリンピックを開催できる条件は下記の2つです。

 1…日本国内も含めて世界的に感染拡大が終息に向かい、世界的な人の移動がスムーズにできるようになる。
 2…ワクチン、または治療薬が完成し、世界的に普及する。

 1については、本来感染者の増加数などで客観的な基準を設けて、それをクリアした場合に開催できるようにすべきですが、現在の日本政府のやり方ではそうした数字の設定は難しいでしょう。

 2については、ただ開発に成功するだけでなく、経済的に恵まれていない国々も含めて世界中で使用可能な状況になる必要があります。

 オリンピック開幕まで1年の今の段階で、未だ確認される感染者の数の増加が止まらず、新たにインドやアフリカの諸国で感染拡大している状況では、ほぼ不可能と言っていい状況でしょう。

地図とグラフでみる新型コロナウイルスの感染者数|ロイター

「オリンピックの開催はCOVID19の感染状況に関わりなく既に決まっている」のではないか

 実は筆者はもうひとつ別の可能性があると考えています。それは、すでに日本政府とIOC東京オリンピックパラリンピックの開催を決定しているというものです。

 世界的に見ても感染は日に日に拡大し、国内でも7月22日にこれまでで最大の感染者数を確認しています。その当日に安倍首相が、オリンピック開催に向けて着実に準備を続けていくと語ったことは、大きな意味があると考えるべきです。

首相、五輪来年開催に不退転の決意 解散戦略に影響も:イザ!

 今後、日本国内で新柄コロナウイルスによる死者が爆発的に増えるようなことがあれば別ですが、日本国内では現状のように世界各国と比べて静かに拡大し、アメリカ、ヨーロッパも感染状況に関わらず経済活動を止めない方向であれば、日本では感染対策は十分に行って医療体制の範囲にコントロールできていると主張して、経済活動の一環として開催を強行してしまうという選択肢があるように思えます。今、GoToトラベルキャンペーンを強行した論理がこれです。

 実は筆者はこの可能性が一番高いだろうと考え始めています。

 感染拡大が日に日に進んでいる現状でも、政府はGoToトラベルキャンペーンを強行し、イベントにも観客も入れ続けて、中国、韓国、台湾からの人の行き来を復活されるようとする準備をするなど、経済活性化優先の姿勢を崩そうとせず、一方で感染防止のための政策は全くと言っていいほど行なっていません。やっていることと言えばマスクの配布くらいでしょうか。

 小池都知事は政府の姿勢を「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる」と表現していましたが、実際にはブレーキは全く踏んでいないでしょう。もし、本気で新型コロナウイルスの感染拡大を終息させて、オリンピックを開催しようと考えているのであれば、現在の政策は明らかに矛盾しています。

 GoToトラベルキャンペーンの東京除外やイベントの規制緩和の延期も世論に負けただけで、政府としては本意ではないでしょう。

 3月末にオリンピック、パラリンピックの1年延期を決めたのが、安倍首相の独断だったことは、その後の関係者の発言で明らかになっています。安倍首相にとっては東京オリンピックの開会式で壇上の立つことは悲願であり、来年9月に総裁任期を終える彼にとっては、1年延期がボーダーラインだったのです。

 安倍首相の強い意向でオリンピックが1年延期になったにも関わらず、政府はどうして感染拡大防止に力を入れないのでしょう。森友学園問題を振り返ればわかるように、今の政府や政府機関は、安倍首相の発言を実現するためであればどんなことでもする組織です。経済界から経済活性化を求める強い突き上げがあるのは間違い無いと思うのですが、それを可能にしているのも、オリンピックの開催が事実上決まっているからだと考えるのが自然です。

 IOCのバッハ会長は、最終決定はWHOに従うと言っていますが、今のWHOの事務局長であればIOCや日本政府の意向の沿った発言をさせることは、容易いことなはずです。

 安倍政権は今後も感染拡大防止は二の次にして、経済活動優先の政策を続け、その延長線上の経済活性化プランの決め手として、東京オリンピックパラリンピックがあるのではないでしょうか。

感染予防策を徹底すれば感染が拡大してもオリンピックは開催できる

 開催に向けての理由づけは今まさに進んでいるGoToキャンペーンとなんら変わりはありません。
「しっかりと感染防止対策をした上で、開催する」
 そして、世論は反対しているように見えても、人々は結局旅行にも行くし、オリンピックも観戦するのです。

 では、その状況下でも開催を実現するには具体的にどのようなことが必要でしょうか? 端的に次の2点だろう思われます。

 1…選手、スタッフの全員の事前にPCR検査した上で移動を含めた来日期間中は完全隔離。
 これには大会を運営するスタッフやボランティアが含まれます。

 2…観客は事前にPCR検査を行なった上で、マスク着用や3密を避けるための感染予防策の実施。
 但し、いわゆる3密を避けるためには観客数を抑えることは避けれらないと思われます。

 判断が分かれるのは海外からの観客を入れるかどうかでしょう。政府は、今後、日本国内の感染状況の関係なく、可能な限り入国禁止の国を徐々に減らしていって、オリンピックまでに限りなくゼロに近づけようとするはずです。その1つ目の目的は、選手たちを日本に入国させることですが、可能であれば観客も同様です。

 但し、日本以外の居住者向けチケットがまだ発売されていないことを考えれば、海外からの客は原則入れない可能性もあります。そのこと自体はオリンピックにとって大きな犠牲ですが、IOCにとって財政的なマイナスはおそらく少ないし、通常の開催を変更し、大きな犠牲を払えば払うほど、開催を望む声が強まり追い風になるでしょう。逆境に追い込まれれば応援の声、支援の声は高まるものです。その風を利用しながら、開催することを第1の目的にバランスを取るのではないでしょうか。

 もちろん、経済優先の現在の政策をを考えれば、強引に海外からの観客の入国も認める可能性も否定できません。

 最終的には、感染リスクがあってもそれぞれ国々の選手やスタッフが来日するのか、各国の競技団体が送り出すかどうかを、当事者が判断することになります。しかし、IOCが参加辞退にはペナルティを課すことで、何が何でも予定していた規模の開催にこぎつけようとする可能性すらあり得ると思います。

 

 ここまでは、筆者の全くの想像であり憶測です。この憶測が正解かどうかは数ヶ月後を待つしかありません。

オリンピックは誰のために開催されるのか?

 7月23日に開幕1年前を記念して大会組織委員会から配信された競泳の池江璃花子選手のメッセージは、トップアスリートのオリンピック、パラリンピックへの思いが見事にまで集約されていました。「アスリートファースト」を現役アスリートである彼女の言葉で世界に発信することに成功していると思います。

 しかし、オリンピックやパラリンピックが、池江選手のように出場できるアスリートや出場を目指すことができるアスリート、全世界の人々から比較して極々限られた彼らの思いを叶えるためのものだとしたら、今のように大々的に開催する意味はあるでしょうか? 

 しかも来年オリンピック、パラリンピックが開催される場合には、通常の開催よりはるかに大きな犠牲とコストとリスクを強いられる可能性が高いのです。果たしてその負担はオリンピックやパラリンピックが国民や全世界の人々にもたらすものとバランスはとれているのでしょうか。それに見合った、喜びや感動、夢、そして経済効果をもたらしてくれるのでしょうか。

新型コロナウイルス感染に打ち勝った証」などという美辞麗句に惑わされずに、オリンピック、パラリンピックの本質的な価値を考えて、日本政府やIOCの動向に注視する必要があると思います。

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4月〜5月
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