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スタジアム建設の意義 その1 今も続く官製スタジアムの建設

進捗しないJリーグスタジアム建設

6月下旬、Jリーグの複数のクラブのホームスタジアムの建設計画について、報道がありました。

Jリーグは、J1、J2、J3のカテゴリーごとに、収容人数などの規模、設備などのホームスタジアムの規定を決めていて、それを、各カテゴリーに参加できるクラブライセンスの参加資格の一部としていて、毎年審査を行なっています。その来シーズンに向けてのライセンスの申請書類の提出期限が6月末だったのです。

Jリーグスタジアム基準 [2022年度用] :Jリーグ

特に、3年前は、この厳しいスタジアムの基準をクリアするための猶予期間を設けて、上位のカテゴリーの基準に沿ったスタジアムがその時点で使用できていなくても、3年間以内に建設などの具体的な計画を確定し、さらに昇格後に5年以内のその計画に沿ったスタジアムを完成させることを文書で約束すれば、昇格を狙う上位のカテゴリーのクラブライセンスを発行することが可能になった最初の年でした。

つまり、例えば、現在はJ2のクラブが、J2基準のスタジアムしかなく、本来であればJ1昇格可能な成績を残しても翌年昇格ができないはずですが、この猶予の規定を申請すれば、最大8年間J2のスタジアムでもJ1に参加できるというものです。

これに沿って、2019年には、JリーグJFLの数チームがクラブライセンスの申請を行いました。

その猶予期間の終わり、このルール「例外規定」を使ってJ1のクラブライセンスを所得したクラブのうちの一つ、現在J3鹿児島ユナイテッドが、具体的な建設計画どころか建設予定地も決定できず、これまでの経緯からJ2のライセンスすら剥奪されるのではないかと危惧されているのです。

鹿児島ユナイテッドの問題点は、スタジアム建設を事実上、鹿児島県と鹿児島市に任せっぱなしにしている点だと思われます。しかも鹿児島県と鹿児島市が意思の疎通が取れておらず、複数の候補地が浮かんでは消えを繰り返していて、長い間進展がないようです。

今回は、鹿児島市は、Jリーグの要求に応えてスタジアム建設を進める旨の趣意書を提出した一方で、鹿児島県はこれを提出せず、Jリーグにスタジアム規定の要件緩和の要求を出したという報道があります。

同じJ2のブラウンブリッツ秋田もスタジアム問題に揺れているようです。

多年にわたってJリーグに新スタジアムの建設を約束しているにも関わらず、こちらも建設予定地が決まらずに、目処が立たないまま時間ばかりが過ぎ、来シーズンのライセンス交付に対して危惧する声が上がっているようです。

こちらも、秋田県秋田市の連携がうまくいっていないようです。佐竹敬久秋田県知事が7月当初の定例会見で、建設に積極的な秋田市が提案している建設予定地について、否定的なコメントを出しました。

佐竹知事によれば、秋田市が建設予定地としている現在農地での建設には、多年に及ぶ地盤改良が必要で、そのための多額の費用もかかるために現実的ではないと指摘しています。また既成事実のように語られているスタジアムの建設費などの秋田県の負担についても、否定的な態度を明らかにしました。

さらに、秋田市が計画する新スタジアムは、ショッピングスーパー大手のイオングループと一体となった総合開発の一部ですが、ネット上で見る限りは、市街地の空洞化などを理由にこの開発自体への反対の声が少なくないようです。

そもそも土地の開発は、都道府県と国の事業であるにも関わらず、一方的に振興を訴え、地盤に問題がある地域での開発やスタジアム建設を推し進めようとする秋田市政には、極めて厳しい目が向けられていくはずです。

7月中旬の秋田県内の豪雨により市内の市街地の広い範囲で洪水が発生しました。このため、秋田市民にとっては早急な治水対策を県と市に求めることになるでしょう。スタジアムどころではなくなるかもしれません。

自治体の支援を受けないスタジアム建設

プロ野球界では、今年北海道日本ハムファイターズのホームグランドとした誕生したエスコンフィールド北海道が、独特なスタジアムの形状や、試合開催日以外にも利用できる施設など、日本のスタジアムには今までなかった特徴があるスタジアムとして注目を集めています。

しかし、最も大きな特徴は、用地こそは北広島市が用意し、その使用料を免除していますが、建設費600億円を一切行政に頼らず、チームの親会社である日本ハムグループが社債発行などで確保し、さらにランニングコストもファイターズと一緒に負担していくことです。

日本のプロ野球は12球団の同様の例は、戦前から続く阪神タイガースが使用する阪神甲子園球場兵庫県西宮市)、西武ライオンズベルーナドーム(西武球場:埼玉県所沢市)、そしてソフトバンクホークスの福岡paypayドーム(福岡県福岡市)の3例があります。

Jリーグの場合も、そうした例はさらに少なく、J1からJ3まで60チームの中で、これまで民間で建設したスタジアムは、ガンバ大阪がホームスタジアムとしているパナソニックスタジアム吹田(市立吹田サッカースタジアム大阪府吹田市)のほか、わずかな例しかありません。

パナソニックスタジアム吹田は、ガンバ大阪の親会社のパナソニックの別法人が建設費の140億円の全てを公募によって集め、万博公園内の借地に建設して、地元吹田市に寄贈して、クラブの関連会社が指定管理者として運営しています。施設を運営するライニングコストもパナソニック側が負担するというのも特徴となっています。

2例目としては、今年オープンした今治FCの今治里山スタジアム(愛媛県今治市)があります。一部にふるさと納税を利用したようですが、チーム自体が主体となって民間資金を集めて建設をしています。

最近になって、このチームのオーナーであり、元日本代表監督の岡田武史氏が、そのほとんどを自分で工面したと話しているようですが、おそらく、彼を長年バックアップしてきた企業から、彼が保証人になって支援を受けたということでしょう。

パナソニックスタジアム吹田の場合も、公募した資金のほとんどがパナソニックやその関連会社によって賄われたことがわかっていますので、やはり、日本ではこうした公募による民間から資金調達は難しいのが現実なのかもしれません。

とは言え、公金が使用されず建設できたことは、評価して良いと思います。

3例目としては、現在、長崎市内で建設が進むV・ファーレン長崎のホームスタジアムがあります。

V・ファーレンの親会社である、ジャパネットたかたが事業主体となって、スタジアムの他に、Bリーグのバスケットボールチームがホームとするアリーナや、ホテル、商業施設、オフィスが一体化する複合施設として建設が進んでいて、サッカースタジアムは2024年秋の完成を目指しています。

それでも続くスタジアムの官製建設

2016年のパナソニックスタジアム吹田の完成によって、日本代表戦も行われるレベルのスタジアムが、民間でも建設が可能なことが実証され、こうした例が続くと思われましたが、現実にはそうはなりませんでした。 

それ以降も、建設費を自治体が負担してサッカースタジアムを建設する例が続きます。

2020年に開業した京都サンガFCのホーム、サンガスタジアム by KYOCERA(京都府立京都スタジアム:京都府亀岡市)は、100億円を超える建設費のほとんどを京都府が、建設地の用地取得の費用を地元亀岡市が負担して建設されました。

こちらも、建設費の内20億円を公募しましたが、1億円強しか集まらなかったことも明らかになっています。

京都サンガFCは、チーム創設以来京都市内にあるの西京極陸上競技場たけびしスタジアム京都)を使用していましたが、親会社の京セラと創業者の事業家稲盛和夫氏が資金を集めて京都市内にサッカー専用スタジアム建設する案が提案された時期もありました。

しかし、京都市京都府がこれを受け入れず、さらに建設自体を京都市が認めなかったために、最終的に京都市に隣接する亀岡市での建設に落ち着いたという経緯があります。

さらに、2023年内に完成予定なのが、J2 のツエーゲン金沢のホームとなるスタジアム「金沢市民スタジアム」(石川県金沢市)です。約80億円をかけて金沢市が建設しました。当初は10000人規模でJ2規格ですが、将来的にはJ1規格の15000人にまで増築できる設計になっているそうです。

広島市内で完成間近なのが、J1のサンフレッチェ広島の新スタジアム「エディオンピースウイング広島」です。

140億円程度と見込まれる建設費のほとんどを寄付金と市債で賄うそうです。おそらく寄付金はサンフレッチェ広島の親会社のエディオンと大株主のマツダからでしょうか。市債と言っても、スタジアム自体が黒字経営になって、市債の償却に貢献することは考えられず、結局その償却には、全額市税が使われることになるでしょう。

広島の場合は、1992年に建設されたエディオンスタジアム広島広島広域公園陸上競技場)を、Jリーグ開幕以来使用してきましたが、この施設の老朽化と、このスタジアムのロケーションが広島市の中心部から離れているために、アクセスの良い場所でのサッカー専用スタジアムの建設がチーム関係者やファンの中から熱望されていました。

特に2009年にプロ野球・広島カープの新スタジアムが開業してからはその声が高くなったようです。

建設地として、複数の場所が行政側から提案されましたが、なかなかクラブや親会社の希望にマッチせず、ようやく現在の場所に落ち着いた経緯があります。

建設地は、広島市の中心街や平和公園にも程近い場所ですが、驚くべきことに広島市は、このスタジアムの計画段階で、このスタジアムパークで年間220万人の集客を見込むと発表しています。

しかし、収容人数3万人のサッカー専用スタジアムで可能な人数は、どんなに頑張っても年間60万人〜70万人ほどです。隣接地に整備した大型緑地でのイベントを期待しているのかもしれませんが、スタジアムも含めて、敷地全体のすぐ北側には多くの市営アパートが立ち並んでいて、今後、広島市はここの住民との調整に頭を悩ませることになるでしょう。

なぜ、官製スタジアム建設は続くのか?

全国の自治体のほとんどは赤字の厳しい財政状況が続いています。にも関わらず、なぜ、事実上、営利法人であるJリーグクラブ専用となるサッカースタジアムの建設に、巨額の税金を投じるのでしょう。

一つ目の原因は、Jリーグ側の問題があります。Jリーグと各クラブの多くが、スタジアムは税金を使って自治体を作るものと考えていて、規約的にもそれを前提に作られているからです。

そうでなければ、例えばJ3のクラブに収容5000人、J2のクラブに10000人のスタジアムを作れとは言わないはずです。ましてや全ての客席に屋根を付けろと言わないはずです。

J3クラブの昨年の平均売り上げはわずか6.9億円、J2クラブでも17億円です。まだコロナ禍の影響を受けている数字とは言え、例えば、今治里山スタジアムのような40億円の投資でも二の足を踏む経営者は多いことでしょう。

平均の売り上げで49億円近いJ1のクラブであれば、総工費100億円程度の15000人のスタジアムを建設できるクラブもあるかもしれませんが、親会社からの補填が無ければ赤字のクラブも少なくなく、現実的ではないかもしれません。

であれば、ガンバ大阪のように親会社や民間企業に資金調達をすべきですが、民間の投資の厳しい判断基準に耐えられるほど、価値のあるチーム作りができているクラブがどれくらいあるでしょうか。

住民が使う大きな施設は国や自治体が作ってくれるものという日本人の思い込みはそうした企業側にもあります。

また、クラブの活動が地元に多大な貢献をしているので自治体がそれを負担するのが当然という思い込みもあり、さらに新しいスタジアムを作ることで地域貢献の効果がアップするという幻想もあるかもしれません。

何より、日本に蔓延している思い込みを、Jリーグやクラブが積極的に利用しているとも言えると思います。

一方で、自治体側にも原因があります。

住民が使う大きな施設は国や自治体が作るものという意識は、当然、自治体の側にもあります。それは使命感と同時に、おそらく、そうした大きな施設を作ることが、首長や議員、官僚の満足感やプライドを刺激するのです。

例えば、100億円をかけて福祉行政や少子化対策をするよりも、100億円をかけてスタジアムを建設する方が、彼らのプライドと達成感を満足させることができるのでしょう。

彼らは「このスタジアムは俺が作ったんだぜ」と言いたいのです。

バブル時代の「箱物行政」のメンタリティーは、今も政治家や公務員の中には根強く残っているのです。

例にあげた、京都と広島の例では、途中、クラブ、親会社主導で、民間負担での建設が提案されていますが、いずれも行政側が拒否した経緯があるようです。

進まない新スタジアム計画

先ほど、スタジアム建設が進まないために、来シーズンのクラブライセンス取得に苦境に立たされている鹿児島と秋田の例を挙げましたが、それ以外にもクラブや関係者の意向に反して新スタジアムの建設計画が進まないクラブは複数あります。

現在J2のヴァンフォーレ甲府は、ホームスタジアムとして使用しているJIT リサイクルインク スタジアム(山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場)に代わって、2006年当時の山本栄彦山梨県知事が知事選前に新たにサッカースタジアムを建設することを宣言し知事選挙に臨みましたが、その知事選で落選しました。

その後、知事が代わるたびに方向性が二転三転し、現在2期目を迎えている長崎幸太郎知事は、新スタジアムの建設の見直し(建設しないこと)を明言した上で、今年1月の知事選で再選を果たしています。

神奈川県相模原市では、かねてから現在J3SC相模原の新スタジアム建設に積極的な意向を見せてきた木村寛太郎市長が、今年4月に行われた市長選で再選しましたが、この市長選中、スタジアム建設の候補地として考えられている相模原駅北口の元米軍施設の跡地利用の方法として、スタジアムの建設を明言していなかったようです。

さらに市長選後に、市役所が行ったこの跡地利用に関する市民アンケートでも、スタジアムを含めた複合施設の建設案を複数の案の中の一つにとどめています。

このアンケート結果の具体的な数字は明らかにされていませんが、スタジアム建設以外を望む声が想定以上に多かったことが、結果発表後の木村市長のコメントに表れています。

日本屈指のサッカーどころ、静岡県Jリーグ創設前に建設された清水エスパルスのホームスタジアムも、建て替え案が具体化できずにいます。

清水エスパルスのホームスタジアムは、急斜面の日本平の山腹に建てられたサッカー専用スタジアムで、日本のスタジアムには珍しい急勾配のスタンドは、サッカー観戦には向いていて、メイン、バックスタンドよりも両ゴール裏の方が大きい作りは、サッカーに熱心な人が多い静岡のサポーターには好評だったと聞いています。

バックスタンド上部に追加されたガラス張りのVIP席も、当時としては斬新なものでした。

その日本平サッカースタジアムも30年以上の年月ともに老朽化が避けられず、チームの低迷とともに、交通機関がバスのみの上に、急勾配の上に立つというアクセスの悪さが、観客動員の低下に拍車をかけてきたと言われています。

また、Jリーグが求めている全座席が屋根に覆われるという点でも、Jリーグの規約に適合していません。

このため、クラブと関係者や支援する市民の間では、新スタジアムの早急な建設の要望が出されてきました。

サッカーが人気スポーツである土地柄もあって、静岡市もこれに応えて新スタジアムの建設に前向きな姿勢は示してきましたが、静岡市が候補地選定など実際に調査を始めたのは2019年になってからのようです。

今年4月に静岡市長に就任したばかりの難波喬司市長は、JR清水駅東側のENEOSの工場跡地に、老朽化した清水区役所などの建て替え施設ともに、複合施設として新スタジアムを建設することを目指し、地権者であるENEOSとの交渉を行い、敷地内の環境調査が行われることが報道されています。

秋田県のお隣、山形県でもスタジアムの建設の見通しがはっきりしません。

現在、天童市内にある県立総合運動公園内の陸上競技場をホームスタジアムとして使用しているJ2のモンテディオ山形は、2015年に「新スタジアム構想検討委員会」を立ち上げて、新たなサッカースタジアム建設を目指してきました。

他のクラブと異なるのは、現在使用しているスタジアムのある天童市と、隣接する県庁所在地の山形市の間で誘致合戦が行われたことです。

昨年4月には、現在使用しているスタジアムがある、天童市内の県総合運動公園内に建設することが、モンテディオ山形から発表されました。

同じ時期に、山形県吉村美栄子知事は、スタジアムの建設用地として、同公園内の敷地を提供することを表明しています。

これに関してよくわからないのが、ネットで検索できる範囲では、モンテディオ山形は、新スタジアムの使用開始を2025年と明言していたにも関わらず、具体的なスタジアムの規模や建設の総工費はどれくらいを見込んでいるのか、その費用は誰がどのようにして用意するのか、そうした情報を見つけることができませんでした。

さらに、2017年にスタジアム建設の事業主体として地元経済界とモンテディオ山形が設立した「新スタジアム推進事業株式会社」を、今年1月に解散し、建設の事業主体をモンテディオ山形の運営会社に移しています。

4月には建設費の高騰により関係各所との調整が進まず、2025年の完成は難しい旨がクラブの運営会社の相田健太郎社長から発表されています。

クラブが提出した新スタジアム計画を市長が完全否定

5月31日、Jリーグ湘南ベルマーレ平塚市に提出していた新スタジアム建設案について、前日の落合克宏市長の会見をもとに各紙が次のような記事を掲載しました。

ベルマーレの新スタジアム計画「無理な提案で残念」 平塚市長が苦言:朝日新聞デジタル

現在使用しているレモンガススタジアム平塚がある平塚総合公園内に、収容人数2万人規模のサッカースタジアムを建設。建設費として見積もられている142億円の内、70億円を平塚市に負担を求めて、残りの費用をスタジアム建設募金団体を立ち上げて公募などで賄うという提案です。さらに、完成後は湘南ベルマーレが指定管理者としてスタジアムを管理することを求めています。

これに対して、落合市長は30日に行われた記者会見で「市の規模から困難だし、専用スタジアムがほしいなら、ベルマーレや応援する商工会議所が中心となって整備されるのが常識的な筋道」と話したそうです。

地元の名士と言える真壁潔会長が率いるこのクラブは、Jリーグ開幕以前は、建設大手フジタ工業のチームで日本サッカーリーグの強豪の一つでした。

Jリーグ昇格以降は、フジタ工業の子会社としての経営が続きましたが、1999年親会社の経営不審により、本拠地としていた平塚市の経済界が中心となって新たに法人化を行い、チームを存続させ、それから20年以上の間、地元との協力関係によって度々の難曲を乗り切ってきました。

1999年の現在法人の立ち上げ時には、当時1年生議員だった平塚市出身の現デジタル担当大臣の河野太郎氏を代表取締役会長に押し頂き、財政的なピンチを脱することに成功し、それ以降も地元に根差したクラブとして政治的にも強さも発揮してきた印象です。

また、かつてJリーグが目指していた総合クラブ型の経営に最も熱心なのもこのクラブの特徴です。サッカーのトップチームを運営する株式会社と、サッカーの育成と他の競技を運営するNPO法人との両輪で、現在も、Jリーグチーム以外に5つのスポーツチームを運営しています。

それはこのクラブが、スポーツを通して多角的な地元貢献が実現できているということでもあります。

そうしたクラブを持ってしても、今回のスタジアムの提案は、平塚市として認めることは難しいということなのです。

落合市長のコメントのポイントは、次の3点です。

  1. ベルマーレが新スタジアムの建設地として提案する総合公園は、子育て支援の中心として、現状変更は認められない。
  2. 建設費の142億円の一部を市が負担することは財政的に認められない
  3. 新スタジアム建設するために総合公園の隣地などを購入する場合も、市が財政負担することは認められない

平塚市が、これまで湘南ベルマーレの活動支援に消極的だったわけではありません。

現在使用しているレモンガススタジアム平塚の使用料の大幅な減免を行なっていますし、このクラブの練習場は市内の公園内に平塚市が整備しています。

スタジアム問題についても、過去にはレモンガススタジアム平塚の増築を平塚市側から提案しているのです。しかし、クラブ側はこれを拒否しています。

にも関わらず、湘南ベルマーレは、かねてから周辺自治体への移転も示唆しています。しかし、これまでの平塚市の財政的な負担と同市の経済界の支援を見てきた近隣の自治体が、おいそれと受け入れに手を挙げるとは思えません。

報道によるスタジアム建設を要望する約5万筆の署名を集めたそうですが、それでも、ベルマーレの試合に足を運んだことがない平塚市民の方が圧倒的に多いはずです。湘南ベルマーレ側は、その現実を踏まえ、平塚市の財政負担をもっと減らすための方策を検討するとともに、より多くの市民にとってメリットがあるスタジアム建設案を再考すべきです。

今年4月の統一地方戦で、磐石の4期目の当選を果たした落合克宏市長の言葉は、今後も湘南ベルマーレに重くのしかかっていくはずです。

さらに、これまで全国各地のJリーグのホームスタジアムの建設に向けて、自治体の首長がここまで明確に否定的なメッセージを発信したのは、初めてのように思います。

地域貢献を標榜し活動してきたJリーグクラブの要望を、真っ向から否定することはできないムードが、これまで各自治体にも、それを取り巻く世論、マスコミにもあったのでしょう。

しかも、湘南ベルマーレのような、Jリーグのスタート2年目から30年近くJリーグに加盟し、地域に根ざして活動してきたクラブの要望に、落合平塚市長がここまで真っ向から否定したことは、これまでの流れを変える可能性があります。

この発言があったからこそ、秋田県の佐竹知事も、7月頭の記者会見でブラウブリッツ秋田秋田市の計画に対して、明確に否定的なメッセージを発すことができたのかもしれません。

但し、河野大臣は、近年も自らのSNSベルマーレについて発信するなど、今もベルマーレ愛を見せていますので、今後彼の影響力を使って一発逆転もあるかもしれません。

 

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