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オリンピック中止、延期の可能性を考える

否定された暖かくなれば収束

 1月から始まった新型コロナウイルスの感染拡大が、中国から日本、韓国、さらにヨーロッパ、アメリカにも広がり、すでに100を超える国や地域に広がっています。

 日本では専門家と称する人たちが当初、気温が上昇すれば死滅または不活性化するという楽観論を流布していましたが、現在の世界的な感染の中でシンガポールなど高温多湿の環境でも感染が広がっていることから、WHOはこれを否定する見解を発表しています。

www.tokyo-np.co.jp

 こうした状況で、少し前までは、噂に過ぎなかった東京オリンピックの中止や延期に現実味が帯びてきました。そこで、改めて東京オリンピックの中止や延期の可能性を検証しています。

中止などの判断できるのは日本の組織委員会ではない

 最近、経済誌プレジデントに、小泉純一郎政権下で経済産業大臣などを務め、現在の日本の経済状況にも大きな影響を残す経済政策を指揮した竹中平蔵氏が、次のようなコラムを掲載しています。

president.jp

 主に日本政府の感染拡大政策を批判し、中国の政策を見習うように書かれた内容ですが、後半にそのタイトルコピーの通り竹中氏が考えた「オリンピック中止のシナリオ」が書かれています。その中で、次のような一文があります。

さて、「東京五輪を中止にする」と最終的に判断するのは誰でしょうか。一般論として、東京五輪組織委員会が自分の判断で中止を判断すると、保険はおりないでしょう。 

  ここに明らかに誤りがあります。「東京五輪組織委員会が自分の判断で中止を判断すると」と書かれています。そもそも、組織委員会には中止を判断することはできません。組織委員会は、イベントとしてのオリンピックを成功されるための実行部隊であって、開催の可否などいわば経営的な判断ができる組織ではありません。この一文は、企業で言えば、営業部門や生産部門が会社の存続などの経営判断をするか否かを書いているようなものです。もちろん、中止が決まれば、中止のための作業を進めるのも組織委員会です。

中止などを判断できるのはIOCと事実上日本政府

 では、東京オリンピックの中止や延期を決めるのは誰でしょうか? そのシナリオはおそらく2つです。本来それができるのは主催者であるIOCです。そして、もう1つは日本政府だろうと考えています。

 

 IOCの判断の基準は大きくふたつ。感染状況と経済状況です。感染状況はさらに分けられて、日本国内の状況と世界的な状況があると思います。

 まず、日本国内で感染が今以上にさらに広がり、不特定多数が感染する市中感染が常態化した場合は、IOCにとっても通常の開催は難しいと判断するでしょう。そこら中に感染者だらけでは、ボランティアも含めたスタッフを確保することも難しいですし、何より選手たちが来日しない可能性も高いでしょう。

 一方、中国に続いて感染が始まった日本は、世界各国より先に収束に進む可能性があります。日本国内で収束に向かっていても、世界各国で感染が拡大していて世界的な渡航が制限されるなど今より切迫した状況になった場合は、IOCとしても重大な決断をしなければならないでしょう。

 経済状況についても、新型コロナウイルスの感染拡大の影響は多大です。3月9日はニューヨーク市場は史上最大の下げ幅となりました。その前の1週間を含めると、リーマンショック以来の経済的な減速を迎えていることは間違いありません。この状況が長引けは、協賛企業も含めてオリンピックどころではないという流れが生まれる可能性があります。その場合はにIOCが中止や延期という選択するのではないでしょうか。

 もう1つの可能性である日本政府が中止にする場合も理由はほぼ同じです。日本国内に感染が蔓延し、海外からの受け入れを難しいと政府が判断するという選択肢があると思います。また、逆に日本国内での感染が収束した一方で、海外での感染拡大が進行中の場合、日本国内での再流行を防ぐために、受け入れを拒否することを理由に開催できないと判断する選択肢があるはずです。

 経済的な理由が発生した場合にはもっと深刻です。3兆円とも言われる投資を無くしても中止しなければいけないほど日本の経済状況が切迫した場合です。

 いずれの場合も、日本政府自体は当事者ではありませんから、正式にはIOCとの契約当事者である東京都とJOCが交渉にあたる可能性が高いですが、組織委員会がそれに当たる可能性もあるでしょう。しかし、前段として日本政府が判断を明確に表明する必要があるでしょう。

 そして、そうした表明に対して、IOCが中止、延期、無観客、他国での開催の中から選択をするのではないでしょうか。

 ここまで新型コロナウイルスの感染拡大に対抗処置をなかなか決断ができず、後手後手を踏んできた今の日本政府にそうした決断ができるかは、全く別の問題です。

 こうやって整理してみると、東京オリンピックが中止、延期などになる場合は、日本国内も世界的にも、かなり追い込まれた状況になっていることが分かります。