スポーツについて考えよう!

日々、発信されるスポーツの情報について考えよう

Go To トラベルキャンペーンが始まる前に考えること

f:id:thinksports:20200730162711j:plain

舞台クラスターを起こした主催者には感染防止の意識が本当にあったのか?

クラスター舞台 出演者、スタッフ、観客の感染者は計59人に 主催者が発表 「演出でハグ」報道は否定― スポニチ Sponichi Annex 芸能

 新宿の小劇場で行われた舞台公演で、出演者、スタッフ、観客合わせて60人近い新型コロナウイルス感染者が確認されていることは、みなさんもご存知だろうと思います。濃厚接触者の数も1000人に迫るそうです。

 舞台公演やコンサートは、6月19日から入場者数1000人以下のイベントであれば開催可能でしたから、100人程度のこの舞台公演はいわばお墨付きのイベントとも言えます。

 その結果がクラスターの発生です。出演者が体調不良を訴えたにも関わらず、公演を続行したり、公演中換気を行わなかったりと、十分な感染対策が行われなかったことが明らかになっています。

 現在報道されている情報が事実であれば、果たしてこの公演の主催者に、本気で感染対策をする気があったかどうか怪しいと思いませんか。このクラスター発生の結果、舞台公演などに対する目が厳しくなって来場を避ける人が多くなるでしょうし、劇場がある歌舞伎町を多くの人から遠ざけることにも繋がるはずです。

プロ野球Jリーグも感染予防策が守られているわけではない

 こうした状況は、スポーツの世界から見て他人事とは言えません。6月19日に開幕または再開したプロ野球Jリーグも、7月10日から観客を入れて試合を開催しています。

 政府や日本スポーツ協会の作った感染予防のためのガイドラインを元に、それぞれにガイドラインを決めて試合を運営しているはずです。

 例えば、Jリーグガイドラインでは応援について次のように定めています。

応援スタイルについても、以下の行為は禁止となる。

・応援を扇動する

・歌を歌うなど声を出しての応援、指笛

・手拍子

・タオルマフラー、大旗含むフラッグなどを "振る "もしく は"回す "

・トラメガを含むメガホンの使用

・太鼓等の鳴り物

・ハイタッチ、肩組み

・ビッグフラッグ(ただし、お客様がいない席に掲出する場合は容認)

解説:「新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」とは?:Jリーグ.jp

 このルールは実際に守られているでしょうか? 

 あくまでも筆者が試合の映像を見る限りですが、鳴り物やメガホン、ビッグフラッグなどの応援は目にすることはありませんが、その他の禁止されている行為は行われているように見えます。

 試合開始時は、間隔を空けて座って静かに応援していても、試合が進み試合が盛り上がると、手拍子がはじまり、大声を出して応援し、時にはタオルマフラーなどを振り回し、ゴールシーンでは集まってハイタッチをしている様子が、映像には映し出されています。もしかしたら、歌も歌っているかもしれません。

村井満チェアマン、浦和サポーターの行動に言及「多くのサポーターが悲しんだ」 | サッカーキング

 上記の記事を読むと、あたかも浦和サポーターだけが悪者にされているようですが、他のスタジアムの映像でも散見できましたし、こうした状況は観客を入れた段階で覚悟しておくべきです。もし問題視するとすればリーグとして状況を予見する能力が足りなかったことと、ひたすら通常開催を目指す姿勢だと思います。

 プロ野球でも同様です。特にさよならホームランなど、エキサイティングなシーンでは、新型コロナウイルスの存在など頭からすっかり消えていそうです。 

 観客を入れた試合が始まった当日の朝、元プロ野球選手の長嶋一茂氏が情報番組で「歌舞伎町をマスクを付けないでグループで歩く人たちと違って、プロ野球ファンは感染対策を意識して節度のある行動ができると信じている」というようなことを語っていました。

 長嶋氏の言葉を借りれば、彼の信用は裏切られたと言えるでしょう。そもそも、今のように感染拡大が危惧される中でも、球場に向かう人たちです。感染防止に対する意識が高いとは言えないでしょう。もちろん、それだけ野球やチーム、選手を愛して、大好きな人たちなのでしょう。しかし、球場に訪れることで、もしかしたら自分が感染し、家族や勤め先の人たちにリスクを及ぼすということを理解していないか、理解していても観戦の魅力にあらがうことができない人たちです。その人たちがスタンドに来て応援すれば、試合に夢中になった彼らが感染予防も忘れてしまうのは当然のことです。

 係員が誘導したり、注意はしているのでしょうが、試合中の興奮した観客にそれほどの効果があるとは思えません。

 そうした中で、プロ野球阪神戦では、主審が観客からの声援のために試合を止める事態が起こりました。

甲子園観客のヤジに場内アナウンスで注意 連日の注意に観戦マナー問われる― スポニチ Sponichi Annex 野球

 これは効果絶大ですね。よほどの状況だったとは思いますが、主審の英断にも拍手を送りたいです。観客が少ないからヤジの声が響いて、誰が発したかも分かり内容もよく聞こえたわけです。

 新型コロナ感染に関係なく、テニスでは、主審が試合を止めて観客の声援や動きを注意することがあります。野球やテニスのようなインターバルの多いスポーツでは、こうした方法も可能ですが、サッカーのようなスポーツでは、試合を止めて主審や場内アナウンスで注意をすることはなかなか難しいのではないでしょうか。

プロ野球Jリーグは安心安全を提供できるのでしょうか

 上の書いたように、十分な感染防止対策ができていない環境は、来場者に安全な感染環境を提供していると言えるでしょうか。こうした状況で、より多くの人が安心してスタジアムに足を運ぶことができるでしょうか。

 プロ野球Jリーグも、観戦エリアを限定して観客を入れて、他のエリアにはパネルを置いたり、応援メッセージのボードを置いたりしています。しかし、エリアを限定した分だけ、人の密度は高まり、感染のリスクも高まります。映像で見る限り、かなりの密度で座っている試合会場も見受けられます。スタンドだけでなく、例えばゲートやトイレなども、エリアを限定することで、かなりの密度が発生している可能性があります。誰もが安心して観戦できる環境を作るという意味では、逆の方向性を示しています。

 安心のための対策が現実的にできないチームもあるかもしれません。プロ野球12球団は、経営規模が大きく格差がないために一律のサービスが可能ですが、Jリーグの場合は違います。経営規模年間110億円を超えるヴィッセル神戸のようなチームから、5億円に満たないJ3のチームもあります。その差は、プロ野球NPB独立リーグと同等、またはそれ以上かもしれません。

 経営規模の小さなチームでは、十分な感染防止対策ができないチームもあるはずです。例えば、試合開催中のトイレの除菌などは、ほとんどの場合、チームの責任で行うはずですが、その人員が確保できない、委託するにもその費用が捻出できないチームもあるはずです。

 そうしたチームとJ1ビッグクラブを一律のルールで試合の開催することが、コロナ禍での安心安全なスポーツの環境作りに有効な方法だと思えません。

 チームの経営規模の格差は、選手のおかれた環境にも大きな違いを及ぼします。

 プロ野球JリーグでもJ1やJ2の強豪チームでは、選手、スタッフは隔離が可能で、個人のレベルに置き換えても選手、スタッフがしっかりとした自覚を持って行動すれば、濃厚接触者は家族だけにしぼることができて、定期的なPCR検査で安全が確保されています。

 しかし、契約選手の平均の手取りが10万円程度と言われているJ3では全く事情が違います。生活のためにサッカー以外にも仕事を持っている選手も少なくなく、その選手が結婚している場合には奥さんも働いてる可能性が高いでしょう。

 そうした選手がチームに一人でもいれば、隔離環境は作れませんし、J3の多くのチームにはそうした選手が数多くいるはずです。また、そうしたチームはスタッフの数も十分でなく、練習環境も一般の施設を使用しているので、十分な隔離は難しいはずです。

 もし、J3の中にJ1並に隔離が可能なチームがあったとしても、試合をすれば濃厚接触をするわけですから、安全は担保されません。

 こうした格差の中でも、選手の誰もが安心してプレーし、ファンの誰もが安心して観戦に訪れることができる環境を作ることを、業界として求められているはずです。

プロスポーツは、COVID19感染拡大防止の規範となるべきです。

 もう1つ気になるのは、試合中の選手の様子です。

 現実的には、トップレベルの選手やスタッフたちは定期的にPCR検査を受けていて、選手同士の感染の可能性は低く、感染予防の必要はほとんどないのかもしれません。

 彼らが発信するメッセージは強く、プロ野球でもサッカーでも、ベンチでは全員がマスクをして、しっかりと間隔を空けて座り、ホームランや得点が入ったシーンでも、感染予防を意識した節度のある行動をしていれば、その様子が伝わり、スタンドの観客や映像を通して見る視聴者に、緊張感が伝わるはずです。しかし、残念ながら一部のチームがベンチでマスクを着用しているほかは、普段の様子と変化は感じられません。ホームランを打った後やゴールシーンのあと様子を見れば明らかです。

 こちらは、リーグやチームが徹底することで、実現が可能です。ぜひ、感染予防を呼びかける意味で、しっかりと感染対策をしている選手たちの姿を通して、感染予防の大切さを発信してほしいと考えます。

阪神 試合中はマスク着用へ 監督はじめベンチ入り選手も― スポニチ Sponichi Annex 野球

何を優先すべきか? 新型コロナウイルスの感染拡大下で、一人一人のリスク管理が感染予防の第一歩

 結局は、試合を観戦に行くかどうかも一人一人の意識や危機感の問題です。感染が拡大方向にある今でも、試合に観に行くことがベストな選択なのか? しっかりと考えるべきです。記録を見ると、プロ野球Jリーグも、多くの試合で上限に近い観客が入っています。それだけ多くの人が試合を観たいと思い、行動に移しているということでしょう。

 試合観戦によるリスクは、多くの感染者が発生し、例えば、感染者の職場が営業できない状況にもなっている新宿歌舞伎町の舞台クラスターの場合と何もかわりはありません。

 一人一人が、自分と自分の家族や職場の人たちの安全や健康を考えれば行動は変わってくるはずです。

 22日から始まるGoToトラベルキャンペーンを利用して、応援しているチームの遠征先の試合の観戦に行こうと考えている人もいるでしょう。普段、見ることができない遠方の試合を低額で観に行くことも可能です。でも、もう一度考えてください。自分のその行動が感染者があまりいない地域に感染を持ち込むかもしれません。訪れた先であなたが感染して、帰ってから家族や職場の同僚のうつすかもしれません。

 政府が国民の命や健康よりも経済活動を優先する日本では、私たちが一人一人が自分や自分の家族の命や健康を守ることを優先に考えて、行動を選択するしかないのです。

 

「GoToトラベル」東京発着は補助対象外に…赤羽国交相 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン

 

新型コロナウイルス関連のコラム】

Jリーガーの新型コロナ感染、試合中止について考える!
東京オリンピックの来年開催は既に決まっているのではないか。
コロナ禍の人々は本当にプロスポーツの再開を待ち望んでいるのか?
東京オリンピック、パラリンピックは本当に開催できるのか?
ジョコビッチ選手のCOVID-19感染の衝撃とその背景
新型コロナによる夏の甲子園中止の波紋
プロスポーツの新型コロナからの出口戦略 海外と国内の比較
プロスポーツの新型コロナウイルスからの出口戦略

【シリーズ・新型コロナウイルス感染拡大のスポーツにおける影響を整理する】
1 - 東京オリンピック・パラリンピックへの影響
2 - スポーツチームの経営の危機
3 - 選手個人と競技団体の危機
4 - 子供や育成年代への影響
5 - スポーツクラブ閉鎖の影響
6 - 今だからスポーツがやるべきこと

新型コロナウイルス感染拡大に対するスポーツ界の対応(時系列のまとめ)】
6月〜
4月〜5月
1月〜3月